未だ果たせぬ打倒アメリカへ挑む60人のジャパン戦士
QB政本、RB李、WR松井が夢の競演 ディフェンスはラン守備がカギを握る

Dream Japan Bowl 2024に出場する全日本選抜チームは昨年のJapan U.S. Dream Bowlに引き続き、社会人アメリカンフットボール・X リーグを中心に組織された。従来の日本代表とは違い、X リーグで活躍する外国籍選手が全日本選抜チームに加わるのが大きな特徴だ。そして、学生からも6名の選手が参入する。まさに日本のアメリカンフットボール界が誇る最高峰リーグからスターが集まった選抜チームである。

公募で募った選手から選ばれた第一次候補79名(故障による入れ替えあり)の中から、1月6-8日に行われた3日間の合同練習を経て選抜された精鋭の60名は、X リーグの選手が54名(外国籍選手含む)、学生アメリカンフットボール選手が6 名。この60戦士が打倒アイビーリーグ選抜に挑む。

これまで日米で組織された代表チームもしくは選抜チームは幾度も対戦してきた。両国が公式に組織したチーム同士の対戦では、日本側がアメリカチームを破った例は過去にない。昨年もアイビーリーグ選抜に20‐24のスコアで惜敗した。今年の全日本選抜は昨年の雪辱を果たすだけでなく、本場アメリカという牙城を崩す歴史的勝利を目指すサムライ集団だ。

注目のクオーターバックにはIBM BIG BLUEの政本悠紀、パナソニック インパルスの荒木優也、そして、2023年度の最優秀大学選手の須田啓太(関西大学)が名前を連ねる。サウスポーの政本はXリーグを代表する好パサーで、クイックリリースで正確無比なパスを投げる。荒木はパスに加えて脚力もあり、Xリーグの2023年シーズンではリードオプションでオフェンスをドライブさせる活躍があった。

チャックミルズ杯受賞の須田は王者関西学院大学を春と秋に破った関西大学の中心選手の一人。勝負強さと勘所のよさをアメリカ人相手にどこまで発揮できるかが注目される。

そのQBとコンビネーションを組むレシーバー陣はワイドレシーバー(WR)とタイトエンド(TE)を合わせて12名がリストアップされた。ライスボウル王者の富士通フロンティアーズからはWR松井理己、柴田源太、TE藏野裕貴、準優勝のパナソニックからはWRブレナン翼、桑田理介、大塩良至、TE西紋弘次が名前を連ねる。そこにXリーグ新人王のWRブギー・ナイト(アサヒ飲料クラブチャレンジャーズ)、ベテランの宜本潤平(ノジマ相模原ライズ)が加わり、対米空中戦を彩る。大学生からは東京大学の太田明宏と立命館大学の大野光貴が参戦する。

ランニングバック(RB)は強力なランナーがそろった。全日本選抜チームの主将に任命された李卓(オービックシーガルズ)は2021年にNFLの国際選手発掘プログラム(IPP)の候補生となった経験があり、2021‐22年の2年間はカナダのプロフットボールリーグCFLで過ごした。こうした環境で、幾度もアメリカ人選手と対等に戦ってきた。デイライト(OLのブロックによって開いたランニングレーン)に迷わず飛び込むスピードとオープンスペースでの走力は全日本選抜随一だ。

オービックで李とチームメートの西村七斗の中央突破力、新人星野凌太朗(東京ガスクリエイターズ)の韋駄天ぶりにも大きな期待がかかる。

オフェンスを支えるオフェンスライン(OL)はほとんどが120キロを超える巨漢ぞろいだ。オールXリーグに選出された山下公平、大久保壮哉、郭宇寧にCFL帰りの町野友哉が加わる(すべて富士通)。パナソニックの小西俊樹、高森恵太、西村拓朗、眞田祥吾、油谷凌、オービックの村田健太を含めたユニットはランブロックで走路を開け、QBをプロテクトする重要な役割を担う。

11人のディフェンスライン(DL)ではパスラッシュに注目だ。宮川泰介(富士通)、島野純三(IBM)、ジャボリー・ウィリアムス(パナソニック)はいずれもXリーグではパスラッシュに定評がある。アイビーリーグ選抜のQBジョー・グリーン(コロンビア大学)は193センチの長身パサーなだけに、DLからのプレッシャーは必須だ。立命館大学の泉恭輔も出場機会を得たい。

ラインバッカー(LB)ユニットは青根奨太(パナソニック)、徳茂宏樹(富士通)、高橋悟(オービック)といった若いながらも安定力が抜群の選手がディフェンス第2線を固める。また、関西学院高等部卒業後にアメリカにわたり、NCAAシラキュース大学でプレーした菅野洋佑がどのようにアイビーリーグ選抜を攻略するのかはこの試合の大きなキーポイントの一つだ。

ディフェンスバック(DB)陣は学生の二人(東田隆太郎、中野遼司、ともに関西学院大学)を含む12人を揃えた。ここでは富士通のベテランDBアルリワン・アディヤミのリーダーシップに期待したい。すでに10年近くXリーグでプレーしているアディヤミはカリスマ的な存在で、その活躍は本場NFLから取材を受けたほどだ。アディヤミとチームメートの高口宏起や奥田凌大、林奎祐、渡辺裕也、井本健一朗だけでなく、ワイズマンモーゼス海人や齋藤健太、竹内廉(いずれもパナソニック)、東方嘉永(オービック)がどのような影響を受けてさらに成長するのかは楽しみだ。
 

ディフェンスにタレント揃うアイビーリーグ選抜
サイズとパワーで全日本選抜に立ちはだかる

Dream Japan Bowl 2024に来日するアイビーリーグ選抜チームは52名。オフェンス24名、ディフェンス25名、スペシャルチーム3名という構成だ。人数的には攻守でバランスがとれているが、ディフェンス主導のチームである印象が強い。というのも、ラインバッカー(LB)を中心に、2023年度シーズンのアイビーリーグの個人記録で上位にランクされている選手が多いからだ。

ブラウン大学のLBイーサン・ロイヤーは10試合の出場で計62タックルを記録し、来日するメンバーの中では最多の数字を誇る。LB陣ではほかにブラウン大学のアイゼイア・ギャンブル、プリンストン大学のウィル・ペレズがタックルトップ50傑に入っている。ディフェンスの第2線の守備は堅そうだ。

タックル数でロイヤーに続くのがハーバード大学のディフェンスバック(DB)ケーレブ・ムーディ(57回)だ。ムーディはパスディフェンスでも成績を残しており、2つのインターセプトと5回のパスディフェンスをマークしている。全日本選抜のQBたちが最も警戒しなければいけない選手の一人だ。ムーディはさらにキックリターナーとしても出場の見込み。2023年シーズンにはパントリターン1回のみの記録だが、24ヤードの好リターンをしており、スペシャルチームでも要注意だ。

ムーディとパス守備でコンビを形成すると予想されるのがブラウン大学のトミー・マロニーである。シーズン中の成績は1インターセプトと6パスディフェンス。190センチを超える身長の持ち主で、日本のレシーバーとは高さのミスマッチでディフェンスを有利に運びそうだ。

ディフェンスライン(DL)は9人で、そのほとんどが身長188センチ以上、体重113キロ超だ。9人のうちブラウン大学が3人、ハーバード大学から2人が選ばれている。アイビーリーグ選抜を率いるのがブラウン大学のジェームズ・ペリーHCであること、そしてハーバード大学がアイビーリーグの優勝校であることを考えるとディフェンスのシステムはこの両校のスキームが中心になることが予想される。

ブラウン大学のDLテレンス・レーンII世は来日メンバーの中ではトップとなる3.5サックを記録している。

オフェンスはタイプの違う二人のQBが出場予定だ。ダートマス大学のニック・ハワードは典型的なモバイルQB。10試合の出場でパス試投はわずかに67回(33回成功)で、1タッチダウンパス成功という内容だ。ただし地上戦ではパス獲得距離の倍以上となる613ヤードラッシュで、10個のタッチダウンランを記録している。

もう一人のQBジョー・グリーン(コロンビア大学)は身長193センチのパサータイプだ。2023年は166回の試投で93回の成功(パス成功率56%)、755ヤード獲得でタッチダウンパス4に対して被インターセプトが3、QBサックは11回浴びている。QBサックの数からもわかるように機動力を武器とするのではなく、ポケットにとどまってターゲットとなるレシーバーを探すタイプだ。

レシーバーではワイドレシーバー(WR)ニック・ラボイ(コーネル大学)に注目したい。58回のパスキャッチで705ヤードの獲得、2タッチダウンパスキャッチの成績を残した。1キャッチ平均の距離は5.8ヤードと決して多くはないが、ショートからミドルのレンジ(範囲)で確実なパスキャッチをする。QBにとっては頼りになり、ディフェンスにとっては厄介な存在だ。

オフェンスメンバーで特徴的なのは5人もいるタイトエンド(TE)だ。数で言えばWRと同数である。これだけの人数のTEが所属する選抜チームは珍しい。しかも、全員が身長190センチを超える。パスキャッチのみならず、2TEセットからのランプレーでも大きな役割を果たすかもしれない。

そのランを担うRBはノア・ローパー(ダートマス大学)、ジョナサン・マラットゥー(ペンシルベニア大学)、タイソン・エドワーズ(コロンビア大学)という布陣。

オフェンスライン(OL)はペンシルベニア大学のトレバー・ラドセビッチの140キロを筆頭に、130キロクラスの巨漢がそろう。日本のDLやLBには立ちはだかる壁となりそうだ。