富士通フロンティアーズの連覇かパナソニック インパルスのリベンジか。社会人王座決定戦となって2年目を迎えるアメリカンフットボール日本選手権プルデンシャル生命杯第76回ライスボウルは奇しくも昨年と同じ対戦カードとなった。

ともに今季はレギュラーシーズンを全勝で終え、ディビジョン首位でライスボウルトーナメントに進出し、クオーターファイナルとセミファイナルでも危なげない勝ち方で順調に優勝決定戦に駒を進めた。ライスボウルを制したチームが「パーフェクトシーズン」を達成することになる。

これほど勝敗予想の難しい試合も珍しい。ともに「盤石」という言葉がふさわしい戦いぶりで死角、隙といったものが見当たらない。シーズン中に対戦がなかったこともあり、どう噛み合うのかも不透明だ。

富士通はクオーターバック(QB)高木翼を中心に得点力の高いオフェンスを展開する。先発2年目の高木は7試合を消化して18個のタッチダウンパス成功に対して被インターセプトはわずかに1回。ロングパスを正確に投げる肩を持ち、松井理己、サマジー・グラントといったワイドレシーバーをターゲットにビッグプレーを連発する。

地上戦では巨漢ランニングバック(RB)のトラショーン・ニクソンがパワフルなランを展開する。一発のタックルでは倒れないニクソンはディフェンスには脅威だ。

これに対しパナソニックのディフェンスがどう対抗するか。ニクソンのランにはディフェンスライン(DL)大野莞爾やラインバッカー(LB)青根奨太、小西憂のランストップが鍵を握る。強力なパスオフェンスにはワイズマンモーゼス海人、ジョシュア・コックスといったディフェンスバック(DB)陣のパスカバーはもちろん、最前線からLBジャボリー・ウィリアムスやDL清水澪寿のパスラッシュで高木にプレッシャーをかけることも不可欠だ。

得点力が高いという点ではパナソニックオフェンスも同様だ。今季から加入のジェイロン・ヘンダーソンは投げて良し、走って良しのQBでシーズン中盤からオフェンスを自在に操る「マエストロ」ぶりを発揮している。

ヘンダーソンがNo. 1パスターゲットとするWRアルフォンゾ・オヌワーは長身なだけでなくキャッチ力にも長けており、幾度もスーパーキャッチを披露した。彼がインサイドレシーバーにいることでLBにはスピード、DBにはサイズでミスマッチを作り出すことができる。
オヌワー以外にも100メートルを10秒台で走る新人渡邊ジャマール、木戸崇斗、桑田理介、ブレナン翼とタレントが揃う。

ラン攻撃はキックリターナーも務めるミッチェルビクタージャモーと2年目の立川玄明のコンビが支える。スピードのミッチェルとパワーの立川といったタイプの違うランナーが繰り出すランはタッチダウンを量産する。

これに対抗する富士通ディフェンスはキャプテンのLB趙翔来を中心に見事な連携で堅い守備を作り出す。フロントのDLジョー・マシスは118キロの巨漢でありながらスピードラッシュも得意でヘンダーソンとのマッチアップは楽しみだ。

DB陣はパスカバーに長けた人材が揃う。アルリワン・アディヤミのマンカバー力はリーグ随一で、奥田凌大や林奎祐はシーズン中に試合の流れを大きく左右するインターセプトでチームに貢献した。こちらもパナソニックのレシーバー陣とどのようなせめぎ合いを見せるのか注目される。

昨年は24-18で富士通に軍配が上がった。ともに高得点のできるオフェンスを有するが、ディフェンスも固く失点が少ないため、今年も20点台の勝負になるのではないか。力が拮抗しているだけにターンオーバーや反則といったミスが命取りとなる。富士通が勝てば2年連続、7回目のライスボウル優勝。パナソニックが勝てば7年ぶり5回目の日本一となる。