パナソニック インパルスと富士通フロンティアーズが1月3日、東京ドームで社会人王者をかけてアメリカンフットボール日本選手権プルデンシャル生命杯第75回ライスボウルを戦う。装い新たとなった頂上決戦で王座に就くのは、果たして6年ぶりの5度目のパナソニックか、それとも2年ぶり6度目の富士通か。
これまで「学生王者対社会人王者」という対戦形式だったが、今年度から社会人リーグ「Xリーグ」が王座をかけて戦う形式に変更されたライスボウル。今季はレギュラーシーズン1位パナソニックと同2位富士通の頂上決戦に相応しい顔合わせとなった。
リーグ戦を7戦全勝のパナソニックは、4強が争うセミファイナルでIBM BIG BLUEに苦しみながらも勝利。2016年以来のライスボウルに駒を進めた。IBM戦では、自慢のラン攻撃が計170ヤードと爆発。特に、エースランニングバック(RB)ミッチェルビクタージャモー(上段写真)が145ヤードを走り地上戦をけん引した。新人の立川玄明、ベテランの横田惇を加えたバックス陣はかなり強力だ。パス攻撃もクオーターバック(QB)アンソニー・ロウレンスが4タッチダウンパスを投げて、パス攻撃が得意なIBMとのシュートアウトを制する原動力となった。レシーバー陣も2タッチダウン捕球の木戸崇斗を筆頭にレオンシャ・フィールズ、ブレナン翼などタレント揃いで層が厚い。ラン、パスともにリーグ屈指の攻撃力なのは間違いない。
その一方で、守備の出来には一抹の不安を残した。IBM戦では、戦前の予想と全く違うオフェンスに手を焼いた。それでも勝ち切ることができたのは、荒木延祥監督がいう「アジャスト力」。各選手の適応力が、第2節のノジマ相模原ライズ戦、セミファイナルのIBM戦の逆転勝利に生かされた。前線は、ジャボリー・ウィリアムス(中段写真上)、ジョシュア・コックス、梶原誠人のラッシュが強力。2列目では、新人の青根奨太が縦横無尽に駆け回り、後方では35歳の辻篤志が精力的に動き回る。富士通戦でカギを握るのは、相手の強力レシーバー陣と対峙するセカンダリー。長身の清家大志、ジョシュア・コックス、ワイズマンモーゼス海人あたりが高さのアドバンテージを生かして、富士通のパス攻撃を分断したい。
対する、9年連続で社会人決勝に駒を進めた富士通の攻撃陣もタレント揃いだ。今季からエースの座に就いたQB高木翼(中段写真下)は、セミファイナルのオービックシーガルズ戦でもミスないクオーターバッキングを披露してオフェンスをけん引し、4連覇を飾った2020年以来のライスボウルにチームを導いた。身長185センチの右腕は、レギュラーシーズン6試合でも12タッチダウンに対して、被インターセプトがわずか2と安定感抜群だ。高木のターゲットには、エースに成長しつつある松井理己、ベテランでシュアハンドの宜本潤平、チームトップに並ぶ4タッチダウン捕球の小梶恭平など球際に強いレシーバーがそろう。特に松井は、リーグ戦のパナソニック戦でパス捕球1回8ヤードに終わっただけに、期する思いがあるはずだ。この布陣にサマジー・グラントが万全ならば、パナソニックと同等かそれ以上の破壊力がある。ランオフェンスでは、リーディングラッシャーのトラショーン・ニクソンがパワフルかつスピーディーな走りでフィールドを切り裂く。第6節のパナソニック戦では、ランに加えてパスでもチーム最多捕球を記録するなどバーサタイルな活躍が期待される。ショートパスからのランアフターキャッチはパナソニックにとって脅威となるはずだ。
守備は、レギュラーシーズン最終戦、セミファイナルと2戦続いたオービック戦で機能した。特にランディフェンスは、昨季王者をいずれも100ヤード以下に抑えただけに、地上戦が強力なパナソニック戦前に大きな自信となったはずだ。また、オービック2連戦では樋田祥一、藤田篤の両ベテランが相手の息の根を止めるインターセプトを決めたことは、チームの士気を上げていることだろう。インターセプト王の奥田凌大(下段写真)、アルリワン・アディヤミを加えたセカンダリー陣は、身長180センチ超のサイズあるレシーバーがそろうパナソニックにスピードで対抗したい。また、前線からラインがプレッシャーをかけ、中盤で主将のラインバッカー(LB)趙翔来らが自由に動き回れると、いかにパナソニックでも簡単には攻め切ることができないだろう。
実力が拮抗したチーム同士の戦いで大事なのがキッキングゲームの精度。26対20でパナソニックが制した第6節の対決では、佐伯眞太郎が4本のフィールドゴールを決めたパナソニックに対し、富士通は西村豪哲が2本外し、その差がそのまま得点差に表れた。頂上決戦では、一度のミスが命取りになりかねないので、両チームともフィールドゴールトライはしっかりと沈めておきたいところだ。