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【Road to Rice Bowl 76】王道を貫いた富士通が2連覇 そして舞台はDream Bowlへ<短期集中連載最終回>

2023年01月04日(水) 07:00

日本のアメリカンフットボールの頂上決戦、アメリカンフットボール日本選手権プルデンシャル生命杯第76回ライスボウルは富士通フロンティアーズがパナソニック インパルスを29-21で下し、2年連続・通算7度目の日本一に輝いた。富士通は直近の9年間で7回目の戴冠だ。

今季無敗で勝ち進んできた2チームの対戦にふさわしく、試合終盤まで勝敗の行方の分からない大熱戦となった。準備期間にあたる試合間隔がレギュラシーズン中よりも1週長い3週間だったせいもあってか、ともに相手チームを徹底的に研究して対策を立ててきた成果の表れた試合だった。

その成果を享受したのはむしろパナソニックのほうだった。今季のリーディングラッシャーでXリーグのMVPに輝いた富士通ランニングバック(RB)トラショーン・ニクソンに対して素早くヒットし、さらに複数のディフェンダーで対応し、一発でのロングゲインを防いだ。また好パサーの高木翼に対しては徹底してプレッシャーをかけ、思うように投げさせなかった。高木は最終的には28回の試投で17回のパス成功、160ヤード獲得で1タッチダウンパス成功(これが逆転のタッチダウンとなった)と「まとめ」たが、試合のある時点では15回中わずか5回しかパスを成功することができなかった。シーズン中に73.7パーセントのパス成功率を誇ったことを考えると、いかに高木が投げあぐねていたかが分かる。

富士通は最初の3回の攻撃シリーズは無得点。一方のパナソニックはRBミッチェルビクタージャモーの2つのタッチダウンランなどでリードを広げ、第2クオーター中盤では14-3とリードを奪った。しかし、ここで富士通オフェンスはあえて王道スタイルにこだわった。つまり、ニクソンのランでリズムを構築し、ここぞという場面で高木がパスを通すいつも通りのスキームだ。

最初は1~4ヤードのゲインで止められることもあったニクソンのランだが、第3クオーター半ばには1回のボールキャリーで10ヤード以上を一気に稼ぐランが目立つようになってきた。こうなるとニクソンのランを基本に高木がパスを組み立てていく得意のスタイルが可能となる。ずっと劣勢だった富士通が第3クオーター終盤に逆転するが、それは王道スタイルを貫いた結果である。

ニクソンは最終的に28回のボールキャリーで188ヤードを走り、3タッチダウンをあげて試合のMVPに選ばれる。パナソニックの荒木延祥監督は敗戦後、「ニクソン対策は1年間練習してきた」と長期にわたって対策を練ってきたことを明かした。結果的にニクソンに走られてしまったことに対しては作戦の失敗ではないとし、「それでも止めきれなかった」と悔しさをにじませた。

富士通がニクソンのランにこだわることができたのは屈指のオフェンスライン(OL)陣がいるからだ。ライスボウルの先発メンバーは郭宇寧、臼井直樹、山下公平、大久保壮哉、勝山晃という布陣。勝山以外はすべて今季のAll-X League選出である。勝山自身も2018-19年に2年連続でベスト11に輝いている名手だ。このOL陣に厚い信頼があるから、序盤で止められてもニクソンのランにこだわることができたのだ。

試合後、ニクソンは「パナソニックは富士通をよく研究してきていた。でも、富士通も彼らの対策を練ってきたんだ」と話した。そして、「富士通のOLは最高だ。それは僕が一番よく知っている」とも語った。

ライスボウルは2021年度から日本のトップリーグであるXリーグの王座決定戦となった。まさに日本フットボールの最高峰を極める闘いであり、内容も競技レベルもそれにふさわしい内容だ。そして、この競技レベルがいよいよ本場アメリカを相手に試されることになる。それが1月22日に国立競技場で開催されるJapan U.S. Dream Bowl だ。

久しぶりの日本国内における国際試合となるこのDream Bowlにはアイビーリーグが選抜チームを組織して来日する。日本側はこれまでの、いわゆる日本代表ではなく、トップリーグであるXリーグの選手を中心に「全日本選抜チーム」を形成する。ここにはXリーグで活躍する外国籍選手が加わるのが特徴だ。これに学生から選抜された選手を加え、まさにオールジャパンの体制でアメリカに勝負を挑む。このDream Bowlこそ、日本のフットボールの手ベルの高さをアメリカのみならず世界に知らしめる試合となる。