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半年で実を結んだオービック大野洋HCのチームビルディング「ただがむしゃらにやってきた」

2023年06月22日(木) 14:51

オービックシーガルズが第43回パールボウルを制し、社会人同士の対戦となった1985年以降では前人未到の4連覇を飾った。今季から指揮を執る大野洋ヘッドコーチ(HC)は、何かを変えることないチーム作りでオービックを春の栄冠に導いた。

ノジマ相模原ライズとの決勝は、厳しい展開だった。前半の得点はフィールドゴールに3点のみ。その後もなかなか得点を奪えず、第3クオーター終盤にはオフェンスのリズムが悪くなった。ここで指揮官は新外国籍クオーターバック(QB)タイラー・クルカを投入した。

実は、QBクルカが再来日をしたのは試合前日。指揮官によれば、元々起用するプランはなかったそうだが、「たまたまオフェンスがまずい雰囲気になったので」と投入理由を明かし、司令塔を先発のQB小林優之からクルカにスイッチした。この采配がずばり的中してシーガルズオフェンスにリズムが生まれ、フィールドゴール2本で加点した。

その後ノジマ相模原にタッチダウンを奪われ、試合時間残り51秒でリードはわずか2点。オンサイドキックを成功させ、フィールドゴールを決められれば土壇場でひっくり返される薄氷を踏む展開だった。それでも大野HCは最後まで選手を信じていた。

試合後の大野HCは、4連覇について感想を求められると「純粋にうれしいです。その一言に尽きます」と普段とは違うハスキーなボイスで回答。「声を出すことくらいしかできませんので、声を出し続けました」。指揮官がサイドラインで大声を張り上げ、終始チームを鼓舞していた様子が直に伝わってきた。

3本のフィールドゴールトライをすべて成功させ、大会最優秀選手に選ばれた新人のキッカー(K)中山龍之介は、「素直にうれしいという気持ちが強いです。でも、嬉しいだけでなくチームの皆さんやファンの皆さんにも感謝の言葉がある。僕一人では点を決められないので皆さんに感謝したいです」と話し、チームメイトやスタンドに駆け付けたファンに礼を述べた。

オービックは大野体制になってわずか半年で、まずはパールボウル優勝という結果につなげた。大野HCは、ヘッドコーチはおろかコーディネーター経験もなく、直近6年はコーチ業からも離れていた。今年で節目の40周年を迎える伝統あるチームの指揮を執ることは相当な重圧があるだろうが、指揮官は背伸びをせず、自分に求められていることを全うしようとしている。

「僕の役割としては、戦術・戦略というよりもチームビルディングに期待をされているので、そこだけを考えて走ってきた。ここまで半年やって来た中でスタイルを構築できたと思うので、それを土台にしながら夏、秋と溶け込んでいけたらと思っています」。

それでは、新生シーガルズは春の間にどこまで仕上がったのだろうか。

「何かを変えてきたというつもりはなく、ただがむしゃらにやってきました。コーチ陣もシーガルズOBが多い中で、体の中にシーガルズの良さが染みわたっている。シーガルズは基本変わらず、時代に即した形になっていると思います」。

明確な点数などは出せなくても、ある程度の手ごたえは感じているようだ。

今季のシーガルズのチームスローガンは「REDEEM(取り戻す・取り返す)」。コーチ陣が一新され、主将には海外での経験豊富なランニングバック(RB)李卓が就任した。生まれ変わったチームは、3シーズンぶりの王座奪還に向け勇往邁進する。