息子との約束を再び叶えた富士通WRグラント、「これ以上ない良い形で終わることができた」
2024年01月05日(金) 18:30
富士通フロンティアーズが3日、パナソニック インパルスを6点差で下してライスボウル3連覇を飾り、8度目の日本一の座に就いた。
試合は、頂上決戦らしく激しいつばぜり合いが続き、10対10で最終クオーターに突入した。決勝のタッチダウンは、練習で1回も成功していなかったスペシャルプレーから生まれた。
敵陣21ヤードで富士通のクオーターバック(QB)高木翼が右のワイドレシーバー(WR)サマジー・グラントにピッチ。ランと見せかけたグラントが、パナソニック守備が一瞬動揺したのを見逃さず、右コーナーに走り込んだWR木村和喜へドンピシャのパスを成功させた。
本職がレシーバーのグラントは、「コーチ陣やチームメートとの信頼を得ることができて(パスを)成功することができた」と振り返れば、キャッチしたWR木村も「コールをされるタイミング次第で自分が空くと思っていたのでいいタイミングでプレーコールをしてもらいました。自信をもって緊張することなくサマジーを信じていました」と首脳陣とフィールドの選手の信頼感によって生まれたと明かした。
グラントは、レシーブでもチームトップの52ヤードを稼ぎ、ライスボウルの最優秀選手に選出された。自身初のライスボウルMVPに輝いた28歳は、「試合に勝つことができて一番うれしい。MVPは子供たちと共有できて興奮しているよ」と喜びのコメントをした。
ライスボウルトーナメントセミファイナルでは3歳の息子から「いいプレーを見たい」とお願いされ、満点回答をしたグラント。ライスボウル前にも愛する息子と再び約束を結んでいた。
ライスボウルの前夜にジュニアを寝かしつけようとしていたがなかなか眠りに落ちず、時計の針は午前1時30分を指していた。大一番を控えるグラントは、「お父さんは寝ないといけないよ。明日は試合があるんだから。もし今寝てくれたら、お父さんがMVPになるかもしれないよ」と伝えたが、愛息はMVPの意味を理解できなかった。
そこで、グラントは「起きたらわかるよ」と話し、最善を尽くすことを誓った。そして有言実行。息子との約束を2試合連続で叶えてみせた。
グラントは、2019年にXリーグMVP、最優秀新人賞、JAPAN X BOWL MVPなど富士通加入1年目で賞を総なめにした。その時は、息子はまだ奥さんのお腹の中にいた。自身が15歳の時に母親が他界したグラントは、「母と息子がこの場にいてくれたら最高なのに」と思ったそうだ。そこから4年が経ち、息子と2歳になる愛娘の前で晴れ姿を見せることができ、アメリカで待つ双子のもう一人の息子にもいい報告ができた。
「今年はこれ以上ない良い形で終わることができた」。
今シーズンを最高の形で締めくくった最高の父親は、愛する子供たちとおもちゃを抱えて、双子のもう一人の息子が待つ故郷へしばしの休息に向かう。