【X Factor】東京ガスクリエイターズ 松倉健雄
2021年05月07日(金) 19:00
Xリーグで活躍する「X戦士」にスポットを当てて紹介する「X Factor」。連載第2回目は東京ガスクリエイターズのキャプテン、松倉健雄選手の登場です。人気漫画「アイシールド21」がきっかけでアメリカンフットボールをはじめたという松倉選手。その素顔に迫ります。
「アイシールド21」で心を打たれた、天才を凌駕する努力の大切さ
「アイシールド世代」という言葉がある。2002年から2009年まで週刊少年ジャンプで連載された「アイシールド21」をきっかけにアメリカンフットボールをはじめた年代である。当時小学校高学年から中学生だと仮定すれば、現在20代後半より上の年齢層がそれにあたる。東京ガスクリエイターズの松倉健雄選手(27)もその一人だ。
中学校でサッカー部だった松倉は日大桜ケ丘高校に進学してもサッカーを続けるつもりでいた。しかし、サッカー部の練習場が校舎の前のコンクリートの上だったために入部をためらってしまう。そんな時にアメリカンフットボール部の存在を知り、愛読していた「アイシールド21」の影響もあって新しいスポーツに挑戦する決心をした。
「(好きなキャラクターは)雷門(太郎)ですね。野球から転向した雷門の姿がサッカーから転向した自分の姿に重なって」と松倉は言う。最も好きなシーンは神龍寺ナーガ戦だそうだ。「(神龍寺ナーガのエース金剛)阿含という天賦の才能だけで生きてきた選手に努力で打ち勝つところに胸が打たれる。自分も特別に運動神経がいいとか足がすごく速いわけではない。泥臭く努力すれば何でもできるというメッセージが込められているような気がして何回も読み返した」
クリエイターズではディフェンダーとして活躍する松倉だが、高校時代は雷門と同じレシーバーやQBを経験した。 日本大学フェニックスでディフェンスに転向するが、試合にはなかなか出場できない日々が続いた。当時の自分を松倉は「ポジションの2~3番手だったので訳が分からないままにフットボールをやっていたという感じだった」と振り返る。
それでも関東大学リーグの強豪校である日本大学は勝ち続ける。「知らず知らずのうちに勝っているという状態。(ほかに)強い選手がいるから勝っているというイメージ」だったそうだ。ところが、クリエイターズに入って、自らも出場機会が増えると感じ方が変わってくる。
「クリエイターズに入ってから試合に勝つことは当たり前じゃないと気づいた。それなり の努力をしなければ やっぱり勝てない。社会人は学生のように時間があるわけではないので、仕事をやりながら自分のトレーニング時間を作る工夫は必要」と松倉は言う。「板井(征人ヘッドコーチ)さんがよく言うが、平日の取り組みが強いチームとの勝敗を分ける。そこはいつも意識している」
忘れられない試合がある。2018年のプレイオフでのリクシルディアーズ戦だ。当時Battle 9所属だった東京ガスは5勝1敗でプレイオフに進出した。その初戦でSuper 9のリクシルをタイブレークの末に破り、翌年から新体制となったXリーグでX1 Super入りを果たしたのだ。松倉は「この試合は絶対に勝ちたいと思っていた。リーグ戦では負けてプレイオフ で2度目のチャンスが来た。絶対に勝つという強い意識で臨んだ試合だった。その試合の結果で今のクリエイターズの位置があるのだから忘れられない」と語る。サイドラインでチームメイトが闘う姿を見ていた大学時代とは明らかにフットボールに対する意識が変わっていた。
昨年、松倉の意識を変えるもうひとつの経験があった。それは2月に行われた日本代表へのトライアウトだった。板井HCの「代表入りする、しないに関わらず、自分がいまどういうフィールドにいるのかを認識して来い」との言葉に背中を押された参加した。結果は不合格だった。
「日本代表には入りたかったが、やはりそこにいたほかの(選抜)選手たちの身体つきやモチベーションをみて、自分やチームに足りないものが再認識できた」と松倉は言う。「今まではクリエイターズの中にしか比べる材料がなかった。トライアウトに参加して以降、 トレーニングや食生活に気をつけるようになった」
NFLではタイラン・マシュー(現カンザスシティ・チーフスS=下写真)が好きだという。175センチ、79キロというNFLでは小柄な部類に入るサイズながら、気迫むき出しのプレイスタイルで「ハニーバジャー」の異名をとる選手だ。ハニーバジャーとはラーテル(ミツアナグマ)の英名で、体長がわずか60~70センチであるにもかかわらず、巨象にも敵意をむき出しにする凶暴さを持つと言われる小動物だ。自動小銃の名前にもなっている。
「あのサイズでNFLで通用することもそうだが、不遇な環境で育ちながら成り上がるストーリーにも感銘を受ける。プレイスタイルなどは難しくて自分にはマネできないが、(大学からドラフト指名されて)アリゾナ・カーディナルスに入って、すぐにリーダー的な存在に なった精神力にインスパイアされる」と松倉は言う。
クリエイターズでは転勤に伴って退任した鮫島靖志前監督に代わり、今季から藤田紀一氏が新監督に就任した。その新体制が発足して間もない4月下旬に東京都を含む4都府県に緊急事態宣言が発出され、富士通フロンティアーズ、ノジマ相模原ライズと組まれていた春の公式戦が中止となった。しかし、チームの主将でもある松倉はそれをポジティブにとらえている。「逆に言えば、もっと準備できる時間が増えたということ。自分たちはまだまだ強くなれる。そのための準備期間ができたとポジティブにとらえて、秋のシーズンの開催を祈って練習 に取り組んでいこうとチームには伝えたい」
松倉健雄(まつくらたけお)
1994年1月26日、東京都出身。日本大学卒。
東京ガスクリエイターズLB、背番号11
身長176センチ、体重90キロ
東京ガスクリエイターズ
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