【X Factor】トロント・アーゴナーツ K 佐藤敏基
2021年07月02日(金) 20:04この夏、6人の「X戦士」がカナダのプロフットボールリーグCFLに挑戦します。「X Factor」ではその6選手全員に独占インタビューを行いました。7月10日のトレーニングキャンプ開始を前にCFLに挑戦する意気込みを聞きます。
FG日本記録は自信に 目指すはXリーグ、CFL、NFLの『三冠』達成
最初に登場するのはIBM BIG BLUEのキッカー佐藤敏基選手(株式会社アスポ)です。4月のグローバルドラフトではトロント・アーゴナーツから2巡(全体の16番目)で指名を受けました。2019年に日本タイ記録となる58ヤードのFGを成功させた佐藤選手。強力なライバルキッカーがいるというアーゴナーツに挑みます。
Q:グローバルドラフト(日本時間4月16日未明)の瞬間はどうしていましたか?
佐藤:ネット配信をライブで見ていました。実はその前に密接に連絡をやり取りしていたのはカルガリーのチーム(スタンピーダーズ)でした。カルガリーから指名をにおわすメールもきたし、「君がCFLにビッグインパクトを起こすと信じている。一緒に練習できる日を楽しみにしている」とまで言われていた。チームのキッカー事情も聞かされていて。カルガリーの観光名所も調べていたくらいです。
トロントは、(指導を受けていた元NFLキッカーの)ニック・ノバックに僕のハイライトフィルムを送るように頼んできて、彼がそれを送ったら「ありがとう」で終わり。僕とは1回も直接のやり取りしていないです。だからトロントから指名されたときはびっくりして、多分ほとんどノーリアクションでした(笑)。 えっ?Toshiki Sato?俺だ、みたいになって。
Q:そのドラフトから約2カ月が経ちました。この間、どう過ごしてきましたか?
佐藤:CFLの開幕が(当初の5月から8月に)延期になったので、かねてから興味があった河口(正史氏 かつてNFLサンフランシスコ・49ersのトレーニングキャンプに参加。現在パーソナルトレーニングジムJPEC TOKYO 代表取締役社長)さんのJPECに通いました。体の作り方をガラッと変えるので、フォームが変わるのはトライアウトの直前などにはできない。でも、CFLの延期で時間ができたので通うことにしました。この2カ月で成長して、ドラフトの時よりもいい選手になったとチームに思ってもらうことが1本目(先発ポジション)を勝ちとるのにすごく大事なことだと思う。そこで、変化して悪くなってしまうことを恐れず、むしろどんどん変化してよくなろうという気持ちでした。
Q:変わったという自覚はありますか?
佐藤:インパクトの力がすごく変わりました。JPECに通って出力が出るようになった。 今はその力のすべてをいかにボールに伝えきるか。それはやっぱり蹴って慣れていくしかないので、時間をかけてやっています。ボールをたたく力は間違いなく上がったと思う。
Q:佐藤選手はこの2年以上、NFLやCFLを目指してきました。この間、自分が成長したなと思う部分はどこですか?
佐藤:2019年のスプリングリーグ(TSL)に参加した時、ある取材で「アメリカ人に負けない強みはあるか」と聞かれたことがある。僕は日本ではキック力があるほうだけど、アメリカでは僕より飛ばす人がいっぱいいて、劣等感を感じることもあった。トライアウトでFGを決められないこともあった。そんな中であっても少しずつ自信をつけてきたときのその質問だったので、まだ自分の強さが分からないながらも「試合で(FGを)決めることです」と答えました。
実際にTSLではFGを4本中4本全部決めて、50ヤードを越えるキックも成功した。その時に「これが強みだ」と思ったし、これを強みにしていれば人種の壁も関係ない。僕より基礎筋力の高いキッカーがいようとゴールポストの間に決めなければFG成功ではないので、そういうところで勝負していけるんだとあらためて自信を持てた。そして、その後の(NFL)トライアウトでも好成績を残してエージェントと契約できたし、NFLのチームからも関心を持ってもらえた。あるNFLのチームはドラフト指名されたときもメールをくれて「CFLも注目しているから頑張れ」と言ってくれました。
Q:この2年間で元NFLのキッカーから指導を受けたり、アメリカでトレーニングを積んできたりしました。
佐藤:もちろん日本でも丸田(喬仁氏 Japan Kicking Academy代表)さんという師匠の下で何年間もやってきたんですけど、逆に長くやってきた分だけ別の人に教わって別のエッセンスが入ってきた時に新しいブレイクスルーが起きることもある。今まで教わったこと、チャレンジしてきたことに対して、違う観点からのアドバイスをもらうことで理解が深まったりだとか、見る角度が変わってきたりということもある。やっぱりいろんな人に指導を受けるというのはすごく大事だなと思いました。
Q:アーゴナーツに対する印象は?
佐藤:めちゃくちゃいいチームだと思ってます。ドラフトの後、どのチームも指名した選手をSNSで紹介していますが、アーゴナーツは日本語で「ようこそ」と書いてあった。グローバルドラフトなので各国の選手の国の言葉で「ウェルカム」を書いてくれていました。チームのSNSを見ているとそれぞれのチームの味があると思うんですけど、僕はアーゴナーツの味が好きですね。
Q: BCライオンズに指名された山﨑丈路選手とはライバルでありながら仲が良く、お互いに切磋琢磨しています。CFLに挑戦する同じキッカーとして彼の存在は意識しますか?
佐藤:意識しているというか、コミュニケーションもとっているし、お互いに負けないようにとは思います。僕は(アーゴナーツの)チームメイトにモントリオール(アルエッツ)から移籍してきたいいキッカー(ボリス・ビーディ)がいるんです。僕はビーディとの戦いをずっと意識しています。山﨑はトロントの人と話をしていたようで、「モントリオールからいいキッカーが来たから、キック、パント、キックオフ全部できる優秀なバックアップを探してるらしい」と教えてくれました。そんなこと僕に言わなくても、と思ったんですけど(笑)。もし本当ならそれはひっくり返したい。確かにストロングレッグでパワーがありそうなキッカーではあるんです。ただ、 トロントでの実績はまだないのでフラットな目で見てもらえる。キャンプが始まったDay1(初日)から結構バチバチかなって(笑)。
Q:佐藤選手はそういうのを聞くと、むしろ燃えるタイプでしょ?
佐藤:そうですね。僕が1本目だと決まってるようなチームだと気を抜いちゃう。それは僕のダメなところもあるんですけど(笑)。挑戦する環境の方が燃えるタイプなので、いいキッカーがいてくれて本当によかったと今は思っています。そのキッカーに勝って1本目になれば、それだけ自信をもってフィールドに立てる。最終的にNFLを目指している以上はやっぱり彼には負けていられない。
Q:CFLに挑戦するにあたって、佐藤選手の武器はなんですか?
佐藤:やはり試合で結果を出すことだと思っています。それこそさっき話に出たビーディはパワーがあるんですけど、もしもそこで僕が劣っていたとしても結果で示せば絶対勝てる。僕にはリリム(ハジルルラフ)という、CFLのオールスターにも2回選ばれたキッカーの友達がいるんですけど、彼はまさにクラッチキッカーでトロントが前回優勝した時のキッカーなんです。CFLからの信頼も厚く、いろんなチームでプレイしてきているので顔も広い。やっぱり結果を出す人はいろんなところから信頼を得るんだというのを彼を見ていると思います。僕もそういう信頼されるキッカーになるためにも、試合で結果を出すことだと思う。それは僕の強みでもあるので、そこを生かしていきたい。
Q:カナディアンフットボールはアメリカンフットボールとルールもフィールドの広さも違います。どうアジャストしていきますか?
佐藤:僕の信条として「Focus on what you can control(自分がコントロールできることだけに集中しろ)」という言葉があります。自分にコントロール出来ないことを気にしてもしょうがない。フィールドの広さについても、自分がやることは変わらないと思う。蹴り分けは大事ですけど。蹴り分けをちゃんとしていつもどおりのベストパフォーマンスできればいい。広さやルールよりカナダの天候は荒れることがあって風もえげつないと聞いているのでそちらの方が対策しなければいけないなと思いつつ、そこも僕がコントロールできることでもない。風のことを考えて蹴り出す射出の角度、エイミングを変えていつものキックをするだけです。
Q:FGの日本最長記録保持者という「肩書き」は自信になりますか?それともプレッシャーですか?
佐藤:プレッシャーには決してならないですね。 結構自信になります。せっかくならXリーグ、CFL、NFLと全部を網羅してやろうかなみたいな(笑)。
Q:三冠達成?
佐藤:はい。これができる可能性のある場所にいるというのはすごく楽しい。
Q:最後の質問です。これからプロ選手を目指すうえで、アマチュアとプロフェッショナルの違いは何だと思いますか?
佐藤:難しいですね。今一番思ってることはフィールドに立ったときの重圧が全然違うんだなということ。プロは生活がかかっている。キャンプで結果を出さなかったらその場で日本に帰らされるかもしれない。そして、チームに対しての責任も違うと思う。僕らのパフォーマンスにお客さんが満足すればスタジアムに来てくれる。チームの勝敗だけじゃなくて経済も僕ら一人ひとりにかかっていると思うと、やっぱり重圧が全然違う。コミットしなければいけない度合いがまた違ってくると思うので、その重圧にメンタルをやられないようにしなければいけないと思っています。
佐藤敏基(さとう としき)
トロント・アーゴナーツK(2巡全体16番目指名)
1993年9月30日、横浜市生まれ。早稲田大学4年生時に甲子園ボウル出場。翌年から加入したIBM BIG BLUEでは2017-18年にジャパンXボウル(JXB)出場。2017年にはJXB最長となる50ヤードを記録した。2019年のXリーグレギュラーシーズンでは日本記録に並ぶ58ヤードのFGを成功している。178 cm、84kg。
Toronto Argonauts(トロント・アーゴナーツ)
1873年の創設で、チーム誕生当時から一貫して同じ名称を使っているプロチームとしては北米最古と言われる。草創期の競技方法は現在のラグビーに近く、チームカラーなどはイギリスの大学の影響を強く受けた。ハイズマントロフィー受賞者でNFLのニューイングランド・ペイトリオッツやバッファロー・ビルズで活躍したQBダグ・フルーティが在籍した1996-97年はグレイカップ連覇を達成した。グレイカップの通算17回優勝はCFL最多記録。チーム名はギリシャ神話に登場するアルゴー船に乗った船員たちの冒険譚からとったもの。本拠地:オンタリオ州トロント ホーム球場:BMOフィールド(CFL使用時25,000人収容)2019年シーズン:4勝14敗(イーストディビジョン3位) グレイカップ優勝:17回(1914、 1921、 1933、 1937、 1938、 1945、 1946、 1947、 1950、 1952、 1983、 1991、1996、 1997、 2004、 2012、 2017年)
HP:https://www.argonauts.ca/
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