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「自分のやってきたことが通用する」NFLのIPPプログラムに一歩近づいた松井理己選手

2022年10月05日(水) 10:00

「夢を見ているようです」
ロンドンで行われたNFLインターナショナルコンバインで40ヤード走で4.41秒という好タイムをたたき出した直後の松井理己選手(富士通フロンティアーズワイドレシーバー(WR))はそう語った。

ロンドン特有の曇り空でやや肌寒さを感じる4日の午前、NFLインターナショナルコンバインはトッテナムホットスパースタジアムでフィールド上で4種目の計測を行った。ランニングバック(RB)やタイトエンド(TE)と一緒にスキルポジショングループで計測を行った松井選手は40ヤード走だけでなく、3コーンドリル、ショートシャトルでもグループトップの数値を出し、ライバル選手たちから祝福を浴びた。

「自分の持てる力をすべて出しきれた。それに対して数値がついてきたということだと思う」と語る松井選手。13か国から44人の選手が招待されたこのインターナショナルコンバインで唯一のWRだったが、その存在感はいかんなく示すことができたようだ。

40ヤードを4.41秒で走るというのは驚異的だといっても過言ではない。今年2月に行われた、主にNCAA選手が対象のNFLコンバインでも松井選手と同じくWRのカテゴリーでトップ10に入る数字だ。

NFLが行うコンバインでは40ヤード走のタイムが重視される。その分野で好記録を出したことは大きな意味を持つ。

松井選手は昨年2月に行われたCFLの国内コンバインに参加したが、カナダに招待されるグローバルコンバインのメンバーには選ばれなかった。つまりは「予選落ち」である。これを悔しく思った彼は陸上競技のトレーニングを取り入れるなどコンバイン数値をあげる努力を続けてきた。それが「本番」で発揮された形だ。

午後にはパスコースを走り、クオーターバック(QB)役のコーチが投げるパスをキャッチするドリルも行われたが、すべてのパスを難なくキャッチ。オーバーショルダーの難しいパスをキャッチした瞬間は周りの選手たちから歓声が上がった。


本人によれば全メニューが終わった後にコーチに呼ばれ、予定にはなかったドリルをいくつか行ったそうだ。それだけコーチの関心度も深くなったということか。

パスコースドリルの最中には間近で見ていた、元ペイトリオッツのGMスコット・ピオーリ氏に呼び止められて「ボールをキャッチしたらすぐにしっかりとホールドしなさい」と直接アドバイスを受ける場面もあった。ピオーリ氏は2000年代にペイトリオッツで敏腕GMとして鳴らした人物で、ビル・ベリチックHCとともに常勝チームを作った功労者の一人とされる。

「(金曜日に)ロンドン入りした時はどうなることかと不安もあったが、自分がどういう選手なのかをアピールすることができた。日本人がこんなにも動けると証明できたことは誇りに思う」と語る松井選手。コンバインに参加する前に比べてNFLに対する印象が変わったかと尋ねるとこんな答えが返ってきた。「NFLは行ってみないとわからない世界。このコンバインにはアメリカのNCAAのトップが参加しているわけではないが、自分が日本でやってきたことが通用するとわかった。一つ上のステップを目指すことで世界が開けると感じた」


NFLインターナショナルコンバインはNFL IPP(NFLインターナショナルプレーヤーパスウェイ)プログラムの候補選手を決めるためのトライアウトだ。IPPプログラムとはアメリカやカナダ以外から人材を発掘するプログラムのことだ。今回のコンバインの結果を経て10名前後が「IPP候補生」となって来年の1~3月に米フロリダ州のIMGアカデミーに招待され、そこで専門のトレーニングを積む。そこからさらにふるいにかけられて残った若干名が正規のIPPプログラム生として来年の夏のNFLのキャンプに参加し、その後の活躍次第でレギュラーシーズン中もチームに帯同できる。

日本人選手では李卓選手(オービックシーガルズRB、現在CFLのモントリオール・アルエッツに所属中)が2021年のIPP候補生になったのがただ一つの例だ。

さて、6日には帰国の途に就く松井だが、休んでいる暇はない。富士通フロンティアーズが9日に神戸市の王子スタジアムでアサヒ飲料クラブチャレンジャーズと対戦するからだ。ロンドンで見せたスピードを今度はXリーグの舞台で発揮する番だ。

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