【MVPインタビュー】富士通RBトラショーン・ニクソン選手:向上心を持ち続ける限り成長できる
2022年12月23日(金) 18:002022年度のXリーグのMVPは富士通フロンティアーズのランニングバック(RB)トラショーン・ニクソン選手に決まりました。ニクソン選手にとっては3年連続通算6回目のAll-X League入りで、2018年に続き2度目となるMVP受賞です。
Xリーグではニクソン選手に独占インタビューを敢行。オフェンスでもディフェンスでもAll-X Leagueに選ばれるほど高いレベルでプレーできる秘訣などについて聞きました。
Q: 2度目のXリーグMVP受賞です。おめでとうございます。
トラショーン・ニクソン選手(以下TN):嬉しいです。でも、私が今望むのはライスボウルに勝つことです。MVPをとることを目標としてきたわけではありません。だから今はライスボウルに集中しています。
Q: 今季のパフォーマンスを振り返ると、531ヤードラッシング、6タッチダウンでリーディングラッシャーにもなりました。レギュラーシーズンが5試合なので1試合平均100ヤードを超えている計算になります。ニクソン選手は今季はハーフタイム後はサイドラインに下がることが多かったので、それを考えると驚くべき数字です。
TN:今年はいいパフォーマンスができたと思います。もっと走れたと思うプレーもありますが、全体的にはよかったと思います。オフェンスラインがブロックしてくれなければ走ることはできません。だから、MVPは私の名前で受賞しますが、これはオフェンスラインもすべて含めた賞だと思います。私だけの力ではありません。
Q: 今年はライスボウルのディフェンディングチャンピオンとして迎えたシーズンでした。挑戦者として臨むシーズンとは何か違いがありますか?
TN: マインドセットという意味では変わらないですが、やはり少し違いますね。チャンピオンはあらゆるチームが向かってくる立場です。挑戦者としてのシーズンはチャンピオンを倒そうとします。その違いはありますが、気持ちの上ではどちらも同じです。富士通はいつでもチャンピオンとしての気概を持っています。それが富士通のスタンダードです。私たちは富士通スタンダードを守り続け、何度でもチャンピオンになりたいです。
Q: 以前のインタビューでニクソン選手はチームの若手によくアドバイスをするとおっしゃっていました。実際、どのようなことを教えるのですか?
TN:ディフェンスの見方などをよく教えますね。ランプレーなら何を見なければいけないか、オフェンスライン(OL)がどこをブロックしているかなどですね。そのほかスキームやボールテクニックなどを教えます。ただ、ランニングバック(RB)ユニットを指導するのは私だけではなく金(雄一コーチ)さん、(HC山本)洋さんもRBルームにいるので、私だけでなく彼らのコーチングが若手を伸ばしています。もちろん、フィルムも一緒に見たりします。
Q: シーズン中のルーティーン、トレーニングスケジュールについて教えてください。
TN: オフはものすごくトレーニングをします。その代わりシーズン中はそれを維持することに努めます。より強くなるというよりは状態をキープすることが目的です。試合のない週は週に3回の練習、フィールドトレーニング、RBトレーニングをします。ゲームのある週は2回のトレーニングで、そのうち1回はリハビリにあてます。あとはフィールドトレーニングとコンディショニングですね。
Q: リラックスする方法は?
TN:私は長い間フットボールをしてきて、たくさんのことを見てきて経験しています。だからいつもリラックスしてプレーすることができます。ギアを上げる必要があるときはそうしますが、常に気持ちを平静に保って頭の中をクリアにします。だからいつもいい判断ができるんです。
Q: 何か趣味はありますか?
TN: 妻と話すことですね(笑)。妻と話したりフィルムを見たり。それとヨガですね。準備が十分でなければナーバスになります。でも、私はいつも準備を怠らないので決してナーバスになることはありません。どんな試合でも準備万端で臨みます。フィルムもたくさん見るし、研究もします。
Q: それでも若い頃はナーバスになることもあったのでしょうか?
TN:若い頃でもなかったですね。ナーバスになることがあるとすれば、それは準備が足りないときです。「え、これは何?どうすればいい?」と戸惑ってしまいます。でも私は準備をきちんとして試合に臨むので、「ああ、このプレーならこれができる、あれができる」と自信を持って考えられます。
Q: 富士通に入ったときはラインバッカー(LB)でした。その後RBに転向して、また今度はディフェンスに戻り、昨年から再びオフェンスでプレーしています。どのようにアジャストしているのですか?
TN: ケガをした後はアジャストが難しかったこともありますが、ケガをする前はオフェンスもディフェンスもプレーしたことがあるので難しさは感じなかったです。大学はディフェンスでしかプレーしていませんでしたが、その前はハイスクールやリトルリーグ、チェスナットリーグで主にRBとしてプレーしていました。だから大きな違いはなかったですが、コンディショニングは大事だと思います。
Q: 驚くべきなのはニクソン選手はLBとしてAll-X Leagueに選出されたあと、RBに転向してRBでもAll-Xになりました。その後ディフェンスライン(DL)でも選ばれ、RBに戻ってもまたAll-X Leagueとなりました。どうやったらそんなに高いレベルで両方の分野で活躍できるのでしょうか。
TN:私が常に心掛けているのは「これでいい」とは決して思わないことです。どんな時でも向上しようとする気持ちを忘れないことです。LBの時は毎年もっとうまくなるように努めていました。ディフェンスラインの時はより強く、RBとしてはより良い動きができるようにと常に考えています。向上心を持ち続ける限り人は成長できます。もう駄目だと思った瞬間に下降線をたどるのです。
Q: 正直なところオフェンスとディフェンスのどちらが好きですか?
TN: どちらも同じくらい好きです。RBが自分の中では「ホーム」のような気がしていますが、私はフットボールが好きなのでポジションは問題ではありません。どちらも好きです。
Q: 他のオフェンスのポジションはプレーしたことがありますか?QBとか。
TN: ないです(笑)。投げるのは下手なので(笑)。
Q: 試合の前に一人で、ゆっくりとステップを踏みながら、時々自分の腕をたたき、自分自身に何かをつぶやきながらウォームアップしている姿を見かけます。あれは試合前のルーティーンですか?
TN: ルーティーンというより私のスタイルですね。試合前に気持ちを切り替えるのです。いよいよこれからバトルだぞ、というように。だから音楽を聴きながら準備をする。自分にかけている言葉はそれほど多くないのですが、ポジティブな言葉を発しています。「オーケー、行こうぜニックン(ニクソン選手の愛称)、君ならできる」といったような気持ちを駆り立てる言葉です。私はフットボールをしているときとそうでないときは別人のようになります。普段は優しいですが、フットボールではアグレッシブになります。
Q: 30歳になって、一般的にはコンディションを保つのは難しい年齢に差し掛かりました。特に気をつけていることはありますか?
TN: 食事には気をつけています。以前はファーストフードやピザをよく食べていましたが、それはもうやめました。30歳になると消化も遅くなるので。それから、今年はトレーニングも変えました。オフには陸上のトレーニングを取り入れました。
Q: ドリームボウルでは全日本選抜の候補に入っています。アメリカではなく日本チームでプレーすることについてどう思いますか?
TN:楽しみです。日本に来てもう8年かな?ファミリーのように仲良くしている人もたくさんいます。だから、日本チームでプレーすることに違和感はないです。アメリカのチームに日本がこれだけできるんだということを見せてやりたいです。それが楽しみです。
Q: 今回の出場は日本からの要請でした。もし、それがなくても日本チームでプレーしたかったですか?
TN: 日本チームでプレーしたくないとは思いませんが、それを特に望んでいたわけでもありません。今年はシーズンでいいプレーもできましたし、ケガもありません。だからプレーしたいと思います。これがもし、コンディションのよくないシーズンだったらプレーしたいとは思わなかったでしょう。
Q: いよいよライスボウルです。どんな試合になりそうですか?
TN: タフな試合になると思います。パナソニック、富士通、オービックはどの対戦でもタフな試合になります。パナソニックのディフェンス対富士通オフェンスはお互いに難しい相手になるでしょうし、それは逆も同じです。接戦になるとは思いますが、最後はボクシングのようなドッグファイトになるのではないかと思います。第1クオーターはスローな展開で、ボクシングで言うならクリーンヒットがひとつふたつあるくらい。それが最後にはヒットして、受けてという試合になりそう。まさにヘビーウェイトのボクシングの試合みたいに。
Q: 最後にファンにメッセージをお願いします。
TN:富士通フロンティアーズをいつも応援してくれてありがとうございます。今年も優勝できるようにベストを尽くします。