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【X Factor】アメフトが好きな女性にもっとアメフトに関わってほしい 女性で初めてX1のレフリーを務めた岡田祐子さん

2023年10月17日(火) 18:00

【女性で初めてX1リーグのレフリーを務めた岡田祐子さん】

Xリーグの様々な分野で活躍する「X戦士」にスポットを当てて紹介する「X Factor」。2年ぶりのコラムは女性としてX1リーグで初のレフリーを務めた審判員・岡田祐子のインタビューです。本場アメリカのプロリーグ・NFLではすでに珍しくなくなった女性のオフィシャル(審判員)ですが、その流れがXリーグにも訪れました。

9月30日に富士通スタジアム川崎で行われたX1 Area第3節のPentaOceanパイレーツ対品川CC ブルザイズの一戦でXリーグの歴史に新しい1ページが刻まれた。トップカテゴリーであるX1リーグで初めてとなる女性レフリーの誕生だ。その第1号となった岡田祐子さんに話を聞いた。

試合終了とともにサイドラインに引き上げてきた岡田さんの額には1試合を戦った選手と同じくらいの汗が光っていた。157センチの岡田さんが広いフィールドをレフリーとして走り回った証だ。インタビューをする頃には着替えも終わって一呼吸おいていたが、それでも2時間13分の試合を裁き終えた高揚感は伝わってきた。開口一番、X1リーグで初のレフェリングの感想を聞いてみた。

「最初はやっぱりすごく緊張していました。(事前には)大丈夫かなと思ったんですけど、実際に(フィールドに)立ったときは緊張しました。周りの方々にいろいろと助けていただいたおかげで、終わってみたら楽しかったって言い方もちょっと変かもしれないですけども、無事に終わってよかったなってすごくホッとした感じになりました」

x2やx3でのレフリーの経験は何度かあるものの、トップカテゴリーのリーグでは初めてだ。どういう気持ちで臨んだのだろうか。

「今までレフリーをしたときに『動きながら(ホイッスルを)吹いてる』とか、『アナウンスがちょっと早い』というのは見ている方に指摘していただいていたので、今日はちゃんと止まってジャッジすることやアナウンスで喋り過ぎずに落ち着いて喋るようにという点を心がけていました」

インタビューでもはきはきと滑舌よく話す岡田さんはマイクを通しても声が聞きやすい。X1 Areaや、おそらく今後担当するであろうX1 Superの試合では観客やチアリーダー、場内アナウンスの声など多くの音がスタジアム内で飛び交うので、これは重要な資質だ。

岡田さんによると、アメリカンフットボールの試合はサッカーやバスケットボールのように、担当審判員の資格等級などによる制限はなく、審判員として参加してきた試合の経験数や、担当ポジションでの実績・パフォーマンスに応じて役割と責任が増えていくのだそうだ。すべての試合におけるグッド コール(適切な判定)やトラブル・課題等は、その試合のレフリーを通じて報告され、周囲の評価が高まるのとともにステップアップのチャンスにつながっていく。今年は春にX2の数試合でレフリーを務め、その評価を経て今回のX1への「ステップアップ」となった。

アメリカンフットボールは決して女性に門戸を閉ざしているスポーツではない。本場アメリカのプロリーグ・NFLでは女性オフィシャルが誕生して久しい。その先駆けとなったサラ・トーマスさんは2021年2月に女性として初めてスーパーボウルのオフィシャルクルーを務めた。また、チームのGMやコーチでも女性の進出は目覚ましい。日本では大学やXリーグでアナライジングスタッフやコーチを務める女性が増えてきた。2020年には関西外語大学では国内初の女性監督(沢木由衣さん)も誕生した。

しかし、競技においてはほぼ「男性社会」だ。特にタックルフットボールにおいては女性競技者はほとんどいない。そういった環境で選手経験もない岡田さんがどういう経緯でアメフトの審判を目指したのだろうか。


「大阪体育大学でアメフトチームのトレーナーやマネージャーをやっていたんです」と岡田さんはアメフトとの出会いを語る。その後、社会人チームの練習を手伝いに行くようになり、コーチたちが審判の代わりを務めているのを見た。その時に、「自分でもルールがわかって審判ができるようになったら手伝えるかな」と思ったそうだ。

西日本でアメフトの審判をしている大学の先輩に「ルールを覚えたい」と言ったところ、「岡田が審判をやりたいって」という話になったのだとか。

「受け入れ体制はできているというお話をいただいて、せっかくだからこういう機会にやってみようかなと。それが十数年前。今でも続けてるのは交友関係が理由ですね。いまの自分の交友関係はアメフトが縁で繋がってる人たちが多いので、こういう縁を作ってくれたアメフトにちょっとでも恩返しができたらいいなという思いで続けています」

オフィシャルを始めたのは関西で、兵庫県の高校や西日本社会人リーグ、中学生のタッチフットボールで審判を務めた。7年前に関東に移住し、関東での審判は6年目だ。

しかし、フィールド上でともにジャッジを務める審判員はほとんどが男性だ。それもアメフト経験者が多い。それでも体力的にきついと感じることはないという。

「さすがに真夏はしんどいですが、動くだけならそこまでではないです。確かにスピードが速いチームを相手にするとちょっと遅れることはあったりもするんですけれど、1試合を通してもう体力持たなかったなっていうのはあんまりないですね」

学生時代は陸上選手で、現在もフラッグフットボールで汗を流すという。本人曰く、アメフトOBたちが多く集うチャリティーフラッグフットボール大会「ハドルボウル」でも女性初の選手だったそうだ。とはいえ、そこはきゃしゃな女性だ。大柄な選手とぶつかって怖い思いをしたことは?

「サイドライン際で選手の足とぶつかったことはあります。(ジャッジをしていて)変に動くとやばいなと思う時はありますけど、怖いとは思わないです。(フィールドで)中の審判をすると多分隠れちゃう感じになると思いますけど」

現在、女性のオフィシャルは関東では岡田さんを含め2人、関西にも1人いる。ご自身のようにアメフト好きな女性がもっと競技に関わるようになってほしいというのが岡田さんの願いだ。

「アメフトが好きだよ、観ていて楽しいよねと思う人が増えるといいなと思います。大学でアナライジングやトレーナー、マネージャーで(女性が)結構いると思うので、その人たちがもっとアメフトに関わってくれたらなと。そういう人が出てくると嬉しいですね」