主将の涙の檄から1年、メンタルの変化から戦力底上げに成功した王者・富士通
2023年10月17日(火) 12:00
富士通フロンティアーズが2節続けて圧勝した。2試合で奪った得点は計133点、タッチダウンは合わせて18を数えた。
第3節のotonari福岡SUNS戦で、富士通は73対0で勝利。パスで6タッチダウン、ランでも4タッチダウンとどこからでも得点できる攻撃の幅広さをアピールした。リーグ2連覇中の王者になかなか穴が見当たらない。
富士通の山本洋ヘッドコーチは、第2節でミスを指摘したディフェンスについても「いくつか細かいミスがありましたが、前節のタックルが決まっていなかったところはある程度修正できていると思います」と及第点を与えた。
その一方で、「上位チームと対戦して、能力が高いキャリアーが出てきた時に同じパフォーマンスをしっかりできるかは、今回起こったことをさらに高めていくことが重要です。ファンダメンタルやテクニックの部分はシーズンを通して突き詰めていくところだと思うので、そこに関しては、悪い意味ではなく課題として持っていくことは大事だと思います」とこれから始まる上位チームとの対戦に向けて引き締めることも忘れなかった。
昨季までの富士通は、前半は圧倒的な強さで対戦相手をねじ伏せていたが、メンバーが変わった後半は追加点を奪えず、追い上げられるシーンも散見した。いわゆる“控え”の選手が出てきてからがくっとレベルが落ちるのが、はっきりと見てとれた。
昨秋の第2節でもotonari福岡相手に69対21の大差で勝った。しかし、後半だけを見れば、19対14とほぼ互角。最終クオーターだけ切り取ってみれば、9対14と負けていた。それだけに、主将の趙翔来は試合後のハドルでまるで敗れたチームかの如く、涙を流しながらチームメイトに檄を飛ばした。
それから1年。キャプテンの声がメンバーの耳に届いたのか、同じ相手に対してシャットアウトした。指揮官も、メンバーのメンタルの変化を認める。
「控えとして出る考えはやめなさい、チームの代表としてプレーするように日頃から言っている。やるべきことを選手たちが理解してやった結果だと思う」
山本HCは試合後の会見で、後半に出てくるメンバーを「控え」と言わずローテーションメンバーと呼ぶ。この指揮官の姿勢が、選手たちにもしっかりと浸透している。デプスが厚みを増したチームに死角はないのか。今後の富士通の戦いにいっそう注目したい。