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愛息のリクエストに完ぺきに応えた良きパパ、富士通WRグラント

2023年12月21日(木) 14:00

【オービックとのセミファイナル第3QにワンハンドキャッチでTDを決める富士通WRサマジー・グラント  ©X LEAGUE】

富士通フロンティアーズが10日に等々力陸上競技場で行われたライスボウルトーナメント(RBT)セミファイナルで、オービックシーガルスを下し、3年連続でライスボウルに駒を進めた。3連覇を目指すチームの勝利の立役者となったのは、ワイドレシーバー(WR)サマジー・グラントだった。

RBT準決勝の舞台となったのは、同じ川崎市でも戦い慣れているホームの富士通スタジアム川崎ではなく、等々力陸上競技場だった。さらにRBTセミファイナルから1クオーターの時間が12分から15分に変更されるなど、いつもと環境が違う中での試合だったが、富士通の山本洋ヘッドコーチは、準備に余念がなかった。

「1クオーター分多くなるから、コンディショニングも含めて選手と話しました」。

この日の富士通は、エースの高木翼が3試合ぶりに先発クオーターバック(QB)を務めた。周囲との呼吸が合うか心配されたが、そこは百戦錬磨の司令塔。精度の高いパスを次々とレシーバー陣に通した。その中でも光ったのが、WRグラントとのホットライン。10対10の同点に追いつかれた第3クオーターには、エンドゾーン内のWRグラントが高木のパスに素早く反応して、見事なワンハンドのダイビングキャッチで勝ち越しに成功した。

【3試合ぶりに先発復帰した富士通QB高木翼(中央)  ©X LEAGUE】

モメンタムを引き寄せるスーパープレーをしたグラントは、「昨年はケガのためチームにあまり貢献できなかった。だから、今週はずっと自分に言い聞かせていたんだ。健康を維持できれば、チームに貢献できるとね。(タッチダウンキャッチについては)予想していなかった。高木がボールを投げた瞬間、誰が捕るのかと思ったら自分が一番近くにいた。このプレーを成功させないとフィールドゴールを選択せざるを得なかったので、ボールを捕ろうと必死だった」と振り返った。

【 第1QにラッシングでTDを決めたグラント(右) ©X LEAGUE】

グラントは、ライスボウル進出をかけたゲームでパスとランでそれぞれタッチダウンを決める大活躍。大一番を前にメンタルの準備を心掛けたそうだが、そこには愛息の存在が大きく影響した。

「この1か月半、子供たちと一緒に過ごしていて私にとって最高の経験の一つになっている。彼らがいるおかげで、ここでプレーすることがより良いものになっている。毎朝目が覚めると、疲れていてエネルギーがなくても、練習に行くときには、いつも子供たちのことを考えている。今日の試合の前に、息子が前回の試合のハイライトを見せてくれた。彼は『パパ、もう一度素敵なプレーをしてほしい。見逃したから』と言ってきた。息子のためにそれをやり遂げられてうれしいよ」。

【 試合後のインタビューで感極まるグラント ©X LEAGUE】

富士通は、2024年1月3日のライスボウルでは3年連続でパナソニックと激突する。グラントは、過去2年の対戦でパス捕球5回18ヤード、タッチダウンもゼロと思うようなパフォーマンスを発揮できていない。しかし、家族の支えを力にするグラントが、セミファイナルのような活躍を再び見せれば、富士通の3連覇はぐっと近づくかもしれない。