ニュース

【Dream Japan Bowl 2024】接戦を制した要因はスペシャルチームの奮闘 山本HCは「陣取り合戦で良い戦いができた」

2024年01月24日(水) 16:15

【歴史的勝利を挙げ、記念撮影に収まる全日本選抜チームの選手、コーチ、スタッフ  ©X LEAGUE】

全日本選抜が、Dream Japan Bowl 2024でアイビーリーグ選抜を下し、歴史的な1勝を挙げた。日本は代表、選抜チーム同士の対戦でアメリカに勝ったことはなく、1934年に日本で初めて公式戦が行われてから90年の時を経てようやく大きな一歩を踏み出した。

全日本選抜は、第1回大会の昨年は善戦しながらも最後は4点差で敗れた。試合後には、全日本選抜のランニングバック(RB)トラショーン・ニクソンが「ハートが大事」だという話をした。それを糧にして、今年は「勝負にこだわり最後まできっちりやりきる」ことをテーマに、ヘッドコーチ(HC)とキャプテンはチーム作りを始めた。

【全日本選抜チームの指揮を執った山本洋HC  ©X LEAGUE】

その甲斐あって、全日本選抜は苦しい時間帯でもアイビーリーグ選抜に一歩も引かず、気持ちを全面に押し出してプレーした。その点は、全日本選抜を率いた山本洋HCも選手たちを称えた。

「ディフェンスが今日は本当によく最後まで頑張ってくれた。オフェンスも苦しい時間帯がありましたけれども、しっかり決めるとこは決めるというところが高いレベルで実行できた」。

【日本アメリカンフットボール協会の寺田昌弘会長から優勝杯を受け取る李卓主将(右)  ©X LEAGUE】

全日本選抜を主将としてまとめたRB李卓も、チーム結成当初から掲げたことが結実したこの日の勝利に胸を張った。

「選手としては『心を一つに戦いましょう』ということを、このチームが始まった当初から話をしていた。このチームはオールスターですけど、やっぱり日本のフットボールを代表しているチームだと僕は認識していたし、それをヘッドコーチとも話をして、チームにそういうマインドを浸透させてきたつもり。そういう意味では、今日の勝利というのは、日本のフットボールを世界に示すチャンスだったのかなというふうに思うし、それを見せることができた」。

【RBサマジー・グラント(中央)の走路をこじ開ける全日本選抜OL陣  ©X LEAGUE】

この日の全日本選抜は、指揮官が戦前から口にしていた「攻守のスクリメージの攻防で勝つ」ということをしっかりと体現した。山本HCも選手の踏ん張りに及第点を与えていた。

「ディフェンスラインに関しては充分勝負できていたところがあるし、しっかりスクリメージラインをコントロールできていたような印象を受けている。オフェンスラインも多少崩されるところはありましたが、圧倒的にやられるというようなシーンはなかったし、比較的ランゲームを組み立てることができたことは、アイビーリーグのディフェンスラインと勝負して、それなりに良い戦いができた」。

【第3Q残り43秒、ゴール前1ヤードでアイビーリーグ選抜の攻撃を止めた全日本選抜ディフェンス  ©X LEAGUE】

昨年の戦いでは、後半に一度は逆転するも最後はアイビーリーグ選抜のフィジカルに屈した。フィジカルという点では、今年も本場から屈強な選手たちが来日したことに変わりはない。昨年とは違って勝ち切れた理由は何なのか。その理由を指揮官は次のように説明した。

【6回のパント機会で平均43.5ヤードを記録してフィールドポジションバトルを有利に運んだK/P納所幸司(左)  ©X LEAGUE】

「スペシャルチームのところできっちりとゴール奥に押し込めたのも結構あったと思うので、フィールドポジションの取り合いというところでは、去年より比較的に良かった。フットボールにおける陣取り合戦みたいなところと、ボールポゼッションのシチュエーションに関して今日はいい戦いができた」。

山本HCが言うように、全日本選抜の前半のセカンドドライブはスリーアンドアウトに終わるも、納所幸司のパントで敵陣20ヤードまで押し返し、ディフェンスもアイビーリーグ陣内から出さずに踏ん張った。序盤にある程度の手ごたえをつかんだことが、接戦をものにすることにつながった。

【ラッシュを交わしながらパスを投げるQB政本悠紀(右)  ©X LEAGUE】

一方、敗れたアイビーリーグ選抜は、来日してから1週間の準備期間ながら最高レベルのプレーを披露した。ジェームズ・ペリーHCは「非常に高いレベルのフットボールを皆さんにご覧いただけたと思う。選手たちはしっかりとプレーしてくれたし、両チームともこのフットボールに対する愛情を存分にフィールド上で出したと思っている」と話す。

全日本選抜の戦前と戦後の印象で変わった点を尋ねてみると、「私は当初からこの日本チームに対して、ものすごくリスペクトしていた。映像を見ても素晴らしくコーチングされていて、充分なタレントが揃っているチームだと思っていたので、試合が終わった後でもまったく変わっていない」と対峙する前から全日本選抜を十分に警戒していたことを明かした。

【アイビーリーグ選抜RBタイソン・エドワードをタックルする全日本選抜LB青根奨太(左)  ©X LEAGUE】

また、日本でアメリカンフットボールをプレーする若い選手たちに対して、「フットボールをプレーする日本の若い選手たちがいると思うけれども、そういった若い選手たちはこの素晴らしい全日本選抜チームをモデルにして、こういったプレーをすればいいんだということを手本としてやってもらいたい。それだけ素晴らしいプレーを今日は繰り広げていた」とエールを送った。

山本HCが「重要な一歩になった」と話したように全日本選抜は歴史的勝利を挙げた。その一方で、指揮官は「次につなげていきたい」と先を見据えることも忘れていない。李主将も「アイビーリーグは多分もっと強いチームをこれから連れてくるようになる。日本はまた超えていくチャレンジをすることになると思うので、そうやって日本のフットボールがまたどんどん成長していく」と、日本のアメリカンフットボール界の発展を真剣な眼差しで話していた。