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【Road to Rice Bowl 78】いよいよプレーオフ スタッツから見るライスボウルトーナメントの行方

2024年11月20日(水) 18:30


X1 Superは23‐24日の週末からいよいよプレーオフ・ライスボウルトーナメント(RBT)が始まる。来年1月3日に行われるアメリカンフットボール日本選手権第78回ライスボウル by GA technologiesに向けて、負けたら終わりのトーナメント戦の開幕だ。2021年から日本一の座に君臨する富士通フロンティアーズが王座を守るのか、「打倒富士通」を実現するチームが現れるのか、すべての答えはここにある。

【ライスボウル4連覇を狙う富士通フロンティアーズのQB高木翼(中央)  ©X LEAGUE】

レギュラーシーズンの6節を全勝で終えた富士通とパナソニック インパルスの優位は動かない。過去3年のライスボウルはこの2チーム間で争われており、今季もそれぞれ総合順位1、2位でRBTに突入する。この2チームを追うのが総合順位3位で2020年シーズンの王者オービックシーガルズと、今季大きく躍進したSEKISUIチャレンジャーズだ(同4位)。この「4強」がクオーターファイナル(23‐24日、富士通スタジアム川崎、ヤンマースタジアム長居)ではホームチームとして対戦相手を迎え撃つ。

【今季3つのキックオフリターンTDを記録しているIBM BIG BLUE DBローガン・スチュワート  ©X LEAGUE】

昨年の初出場に続き今年もRBTに進出した東京ガスクリエイターズは第2節にIBM BIG BLUEを破って勢いに乗った。その東京ガスと死闘の末に引き分けの名勝負を演じたノジマ相模原ライズは今季の目標としてきたパス攻撃の向上が実現した。エレコム神戸ファイニーズはシーズン後半を2勝1敗で乗り切ってチームの戦力は上向きだ。IBMはオービックの唯一の黒星を与えたチームで、過去3年で2回セミファイナルに進出した実力者である。

【IBM戦で勝利を決定づけるQBサックを決めた東京ガスDL馬塲倫太郎(右)  ©X LEAGUE】

さて、RBTに出場する8チームの主要なスタッツを見ると、総合順位とはまた違ったチームの特色が見えてくる。

チーム オフェンス ディフェンス 得点 失点 TDラン TDパス FG成功率 TA GA 3rd-D成功率
富士通 2,591(1) 1,165(2) 282(1) 44(1) 16(1) 17(2) 5/6(1) 10(3) 5(4) 21/38 (1)
パナソニック 1,928(4) 1,395(4) 224(3) 49(2) 12(2) 12(5) 9/13(4) 13(2) 1(1) 16/50 (8)
オービック 2,300(2) 1,061(1) 259(2) 65(3) 10(3) 19(1) 6/8(2) 14(1) 9(7) 19/46 (5)
SEKISUI 1,866(6) 1,337(3) 135(7) 85(4) 3(7) 13(4) 6/9(5) 9(4) 7(6) 40/73(2)
東京ガス 1,667(7) 1,512(5) 141(5) 110(6) 8(4) 9(7) 7/11(6) 6(7) 4(3) 22/59(7)
ノジマ相模原 2,215(3) 1,700(7) 140(6) 132(7) 3(7) 14(3) 7/10(3) 8(6) 10(8) 34/66(3)
エレコム神戸 1,876(5) 1,898(8) 151(4) 105(5) 8(4) 11(6) 4/7(7) 9(4) 3(2) 17/44 (6)
IBM 1,491(8) 1,693(6) 116(8) 138(8) 4(6) 5(8) 4/11(8) 6(8) 5(4) 26/62(4)

スタッツの見方:オフェンス=オフェンスによる獲得距離(単位はヤード) ディフェンス=ディフェンスによる喪失距離(単位はヤード) 得点=チーム総得点 失点=チーム総失点 TDラン=ランプレーによるタッチダウン数 TDパス=パスプレーによるタッチダウン数 FG成功率=フィールドゴール成功率 TA=Takeaway数 (ターンオーバーを獲得した回数) GA=Giveaway数(ターンオーバーを奪われた回数) 3rd-D成功率=サードダウンでファーストダウン更新に成功した確率;カッコ内の数字はRBT出場チームにおける順位

【ランとパスで縦横無尽の活躍を見せるエレコム神戸ファイニーズQBデイビッド・ピンデル(左)  ©X LEAGUE】

チームはレギュラーシーズン中の勝ち星によって決まる総合順位の順番で並んでいるが、ここで掲げた10のカテゴリーでスタッツの順番が総合順位と同じものはひとつもない。そこにチームの特色が表れる。たとえば、総合2位のパナソニックはオフェンスが4位だ。これは、この表にはないがパスオフェンスによる獲得距離が8チーム中一番少ないことが起因している。ランオフェンスは2位なのだが、トータルオフェンスだと4位になる。

【レシーブによる獲得距離でリーグトップのノジマ相模原ライズWRテイ・カニンガム(右)  ©X LEAGUE】

ほとんどのチームがタッチダウンはランよりパスによるものが多い(唯一の例外は同数のパナソニック)が、その傾向が顕著なのがSEKISUIとノジマ相模原だ。この両チームは今季パスオフェンスが好調で、それがタッチダウンプレーにも反映されている。

富士通はほぼすべてのカテゴリーで8チーム中1位の数字を残しているが、意外にGA(=Giveaway、ターンオーバーを奪われた数)が多いのがわかる。もっとも、ターンオーバーはTA(=Takeaway、獲得した数)とGAの差(ターンオーバー率)が重要で、この数字がプラスに大きい方が試合では有利になることが多い。相手のオフェンスからボールを奪って、自チームのオフェンスに攻撃機会を与えることができるからだ。

【今季レギュラーシーズンゲームを被インターセプトゼロで乗り切ったパナソニック インパルスQB荒木優也  ©X LEAGUE】

ターンオーバー率が高いのはパナソニック(11)だ。パナソニックはレギュラーシーズン6試合でGAが1回しかないことが大きい。ちなみに、クオーターバック(QB)荒木優也は今季まだインターセプトを喫していない。オービックはTAが14とトップだが、GAも9回と多い。

【抜群のパスキャッチ力を誇るSEKISUIチャレンジャーズWRブギー・ナイト  ©X LEAGUE】

他に興味深いスタッツを拾うと、SEKISUIの3rd‐D成功率だ。3rd‐D成功率というのはサードダウンのプレーでファーストダウンを更新することに成功し、パントまたはフィールドゴールをまぬかれた比率のことだ。ファーストダウン更新の数をサードダウンの回数で割ったもので、数字が大きいほどドライブ継続率が高い。

【リーグトップの8TDパスキャッチをマークしたオービックシーガルズWR渡邊ジャマール(中央)  ©X LEAGUE】

SEKISUIはサードダウンの回数も73とダントツので多いのだが、成功も40回(成功率54.8%)と高い数字を残した。これは、SEKISUIがファーストダウンとセカンドダウンで相手ディフェンスに止められても、サードダウンで挽回できる能力が高いことを示す。相手チームはSEKISUIのサードダウンオフェンスを警戒しなければいけないということだ。SEKISUIはQBギャレット・サフロンがブギー・ナイト、亀山暉、阿部拓朗といった豊富なレシーバー陣に投げ分けることができ、それがサードダウンでのファーストダウン更新率の高さにつながっていると考えられる。

あくまで数字は数字だ。一方で「数字は嘘をつかない」ともいう。アメリカンフットボールはスタッツでも楽しめるスポーツだ。スタッツの観点からRBTを占ってみるのも一興だろう。