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炎天下の練習が歴史的勝利を呼ぶ ノジマ相模原の城ケ滝HC「日頃の練習の成果」

2025年09月26日(金) 12:00

【真剣なまなざしで戦況を見つめるノジマ相模原ライズの城ケ滝一朗HC  ©X LEAGUE】

試合時間は残り約4分。5点差に詰め寄ったノジマ相模原ライズは、一か八かのオンサイドキックに賭けた。キッカーの足から放たれたボールが絶妙な転がりを見せ、味方の胸にすっぽり収まった瞬間、スタジアムの空気が揺れた。誰もが“普通は決まらない”と考える場面で、ノジマ相模原は勝負をつなぎ、そして歴史を塗り替えた。

9月14日、X1 Super第2節。富士通スタジアム川崎で行われた一戦は、ノジマ相模原が富士通フロンティアーズを29対28で破る大金星となった。秋シーズンで富士通に勝つのはチーム史上初。さらに富士通が秋にパナソニック、オービック以外に敗れるのは2012年以来、実に13年ぶりの出来事だった。

勝因の裏側を語ったのが、城ケ滝一朗ヘッドコーチだ。試合開始は12時。厳しい暑さの中、最後まで足を止めなかったライズの姿勢には理由があった。

【富士通QB高木翼(左)にプレッシャーをかけるノジマ相模原DL有藤直哉(右)  ©X LEAGUE】

「僕らはこの時間にずっと練習しているんですよ。普段は午前9時開始が多いんですけど、午前11時から午後3時の間にもやっている。暑さ対策として朝や夕方を選ぶチームもあると思うけど、うちは選択の余地がないため練習の開始時間を選べない。だから日頃からこの暑さには慣れていたんです」

実際、最終盤には富士通の選手が脚をつる場面が見られた一方で、ノジマ相模原は精力的に動き続けた。指揮官は「夏の暑い時期にみんなで頑張って走ったことが、最終クオーターでいい方向に出た」と語る。準備の差が、王者を追い詰める底力になったのだ。

試合の流れもドラマチックだった。前半は富士通の攻撃を止められず、ノジマ相模原はビハインドを背負った。それでも「手応えはあった」とは主将の宜本潤平は言う。攻撃は確実に前進し、ディフェンスも我慢を続けていた。後半に入るとオフェンスが息を吹き返し、逆転の機運が高まる。

【オンサイドキックを蹴るノジマ相模原K佐藤太希  ©X LEAGUE】

そして迎えた終盤。絶体絶命の場面で成功させたオンサイドキックが、流れを決定的に変えた。蹴ったのは先発の竹内空ではなく佐藤太希。明治大学出身の25歳がこの場面だけフィールドに立ち、大仕事をやってのけた。城ケ滝HCは「(佐藤を)褒めてあげてください。練習からオンサイドの調子は、彼の方が良かったのは間違いない」と手放しでほめたたえた。

再び攻撃権を得たライズは、この好機を見事タッチダウンに結びつけ、ついに試合をひっくり返した。ここで宜本の言葉がよみがえる。「普通あんなの決まらない。でも俺らは富士通に勝つことにフォーカスしてやってきた。準備勝ちというのはあるかもしれない」

【勝利が決まり喜ぶノジマ相模原ライズの選手たち  ©X LEAGUE】

最後はわずか1点差。紙一重の勝負を引き寄せたのは、偶然ではなく必然だった。日々の練習で積み上げた「暑さへの適応」、そして常勝チームを倒すために磨き続けた執念。その全てが、29対28というスコアに結集した。

次戦は28日の富士フイルム海老名Minerva AFC戦。城ケ滝HCは、「今日で分かった通り、攻め続けるだけ。守ったら負け」とあくまでも攻めの姿勢を貫き、開幕3連勝を狙う。