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バチバチから切磋琢磨へ 新人RBトリオが示すオービックの未来

2025年09月26日(金) 13:00

【オービックシーガルズQBピアース・ホリー(右)からハンドオフを受けるRB島田隼輔  ©X LEAGUE】

X1 Superの第2節、オービックシーガルズは東京ガスクリエイターズを相手に力強く押し切った。試合の主役となったのは、新人のランニングバック(RB)島田隼輔だ。同期のRB陣が揃って注目される中で、この日は14キャリー、65ヤード、2タッチダウンと、持ち前のパワーとタフネスを前面に押し出し、勝利に直結するランを披露した。

開幕戦では、同じくルーキーのRB長尾涼平がラン3回で70ヤード2タッチダウン、廣長晃太郎も3回で30ヤードを記録。島田もタッチダウンこそ挙げたものの、2人と同じキャリー数でわずか7ヤードにとどまり、同期の2人に大きく水をあけられていた感があった。だが第2節では、試合序盤に長尾が負傷で戦列を離れるアクシデント。その穴を埋めるように島田がボールを託され、ショートヤードを確実に獲得しながらエンドゾーンをこじ開けた。本人も「自分の大きな体を生かし、ゴリゴリとランを出せたのは良かった」と振り返るように、パワーランナーとしての真価を発揮し、チームMVPにも選ばれる活躍だった。

背番号29は、昨季まで主将を務め、NFL挑戦も視野に入れていた李卓が背負っていた番号だ。島田は「プレッシャーをかけるために選んだ」と語る。オービックの大黒柱が去った後、その重みを受け継ぐ自覚が背番号に宿る。ルーキーながらここまでチーム最多の3タッチダウンを記録し、早くも存在感を示しているのは、その意志の強さの表れだろう。

【ボールを持って走るRB廣長晃太郎  ©X LEAGUE】

興味深いのは、島田、長尾、廣長という新人RB3人の関係性だ。春の段階では秋季リーグ登録を巡って互いにピリピリとした空気が漂い、本人も「バチバチだった」と認める。だが全員が登録された秋以降は状況が一変。練習や食事、移動まで常に一緒に行動しながらも、互いに持ち味を吸収し合う関係になった。

島田は「2人はスピードやキャッチがある。僕にはない部分を見習いたい」と語り、自らの武器であるパワーをチーム内でどう際立たせるかを考えている。ルーキー同士が反発から切磋琢磨へと変化していく過程は、オービックの将来を語る上で象徴的なエピソードだ。

塚田昌克ヘッドコーチも「3人それぞれタイプが違うことがチームの強み」と評する。練習は主にブロッカーを任されてきた島田が、試合でその力をぶつけられる場面を待ち続けていたのは確かだろう。持ち味を存分に出した第2節のパフォーマンスは、その期待に応えるものだった。

【開幕節で独走タッチダウンランを見せるRB長尾涼平  ©X LEAGUE】

「ライスボウルで優勝するだけでなく、自分自身も活躍して勝ちたい」。島田はそう言い切る。“李卓の後継者”として、そして“新人RBトリオの一角”として、オービックの未来を背負う覚悟を示している。島田の29番が、これからチームにどう浸透していくのか。ルーキーイヤーの彼の挑戦は、まだ始まったばかりだ。