勝負を決めたのは切り替えの速さ―オービックが貫いた「次のプレー」
2025年11月19日(水) 18:00
【試合時間残り1分19秒で決勝の46ヤードTDパスをキャッチするオービックWR佐久間優毅(右) ©X LEAGUE】
X1 Super最終節、オービックシーガルズがノジマ相模原ライズを相手に見せた逆転劇は、単なる勝利ではなかった。
一時はセーフティを奪われるなど終盤までリードされる苦しい展開。それでも、チームは崩れなかった。試合後、塚田昌克ヘッドコーチが語った言葉に、その理由が凝縮されている。
「試合が始まる前に、簡単じゃない、絶対しんどい試合になると伝えていました。どんだけ悪いプレーをしても引きずらず、どんだけいいプレーをしても余韻に浸らず、とにかく次のプレーに集中する。その流れの一つがあの場面でした」
第3クオーター終盤、ノジマ相模原にセーフティーを奪われた瞬間、スタジアムには嫌な空気が漂った。しかし、サイドラインに動揺はなかった。試合前から共有していた“悪い流れも飲み込んで前へ進む”意識が、まさに体現された瞬間だった。
【第3QにRB西村七斗(右)がエンドゾーンでタックルされてセーフティを献上 ©X LEAGUE】
試合を決めたのは、QBピアース・ホリーからWR佐久間優毅への46ヤードタッチダウンパス。塚田HCは「ロングターゲットは佐久間の方が多い。最も自信のあるプレーでした」と振り返る。だがその直後には苦笑まじりにこうも漏らした。「ちょっと早く決めすぎましたね。本当は時間を使わないといけないと分かっていたんですが、負けている時は我慢できなくて……。」
冷静な戦略眼の裏に、勝負の現場で燃え上がる情熱。試合を通じて、オービックというチームが持つ“理性と本能”の両輪が見事に噛み合った。
プレーオフを見据える指揮官の視線は、すでに次の戦いに向いている。
「順位が何であっても、トーナメントは負けたら終わり。一戦必勝でいきます。シーズン当初の気持ちを新たに、一日一日を大切に積み上げていきたい」
見る者にはドラマチックな展開だったが、現場では息の詰まるような攻防の連続だった。それでも、悪い流れを断ち切り、逆境の中で立ち上がるチームの粘りと信念が、最終的に勝利を引き寄せた。オービックの6連勝は、勢いだけではなく、試練を力に変える強さの証だった。
