新たな船出の果てに―エレコム神戸藤本HC、再建の一年でつかんだ歓喜
2025年11月19日(水) 19:30
【ディフェンスを振り切ってエンドゾーンに駆け込むエレコム神戸RB鶴留輝斗(左) ©X LEAGUE】
ライスボウルトーナメント進出を懸けた最終節。エレコム神戸ファイニーズはオール三菱ライオンズとの激戦を27対20で制した。新体制1年目、藤本浩貴ヘッドコーチのもとで大幅なチーム再編に取り組んだ一年は、決して平坦ではなかった。それでも、苦しみの先にあったのは確かな成長と、選手たちが掴み取った「自力での切符」だった。
藤本HCにとって、今季はまさに「ゼロからの出発」だった。新体制1年目にして選手の大幅入れ替え。春から秋にかけての道のりは、試合の勝敗以上に「チームをどう一つにするか」との格闘だった。「一体感ですよね。心を一つに、ベクトルを同じ方向に向けて―」。藤本が掲げたテーマは、シーズンを通してチームの軸となった。
前半はオフェンスもディフェンスも噛み合わず、もどかしい展開。それでも指揮官は焦らなかった。終盤の勝負どころでは、経験豊富なWR内田大喜がチームを導いた。コーチ兼任として戦術面からも攻撃を支える内田の集中力が、RB鶴留輝斗の決勝タッチダウンへとつながった。「勝負どころの集中力はチームで一番。だから託しました」と藤本は振り返る。
【エレコム神戸WR内田大喜 ©X LEAGUE】
攻撃陣ではQBデイビッド・ピンデルが冷静にゲームをコントロールした。オール三菱がパスを警戒する中、「無理に投げず、ダメなら走って刻め」との指示を忠実に遂行。ランプレーで流れを呼び込み、攻撃の幅を広げた。さらにルーキーRB鶴留のタッチダウンは、積み重ねてきた努力の結実だった。「彼はまじめに練習もトレーニングもしてきた。出すべくして出した結果」と藤本は目を細める。
【ボールキャリアーをタックルするエレコム神戸LBコルビー・キャンベル(左) ©X LEAGUE】
ディフェンスではLBコルビー・キャンベルの存在が欠かせなかった。野生の本能のようにプレーをやり切るその姿が、チーム全体を鼓舞する。「ムードメーカーであり、最後までやり切る能力に長けている。彼のリーダーシップは本当に大きい」と藤本は称えた。
「普通にやれば勝てないと思っています」。ライスボウルトーナメント1回戦(クオーターファイナル)、相手は格上のオービックシーガルズ。しかし、藤本HCの言葉には悲観ではなく覚悟が宿る。試練と再生の一年を経て、一体感を手にしたチームが、再び挑戦の扉を叩く。
