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「予想以上にしんどい試合だった」──ピンデル封じが支えたオービックの接戦力

2025年12月09日(火) 12:00

【エレコム神戸QBデイビッド・ピンデルをタックルするオービックLB髙橋悟(右)  ©X LEAGUE】

勝ち切る力を問われた48分だった。

ライスボウルトーナメント初戦、オービックシーガルズはエレコム神戸ファイニーズを相手に10対7の接戦を制してセミファイナルへ進んだが、塚田昌克ヘッドコーチは「予想以上に本当にしんどい試合だった」と振り返る。開幕からの大勝続きが物語っていた「強さ」とは異なる、消耗戦の末に得た前進だった。

試合を分けたのは、ヘッドコーチが強調したディフェンスだ。

【オービックシーガルズ塚田昌克HC  ©X LEAGUE】

「今日の一番の勝因は、ディフェンスがピンデルを止めたこと」シンプルな言葉だが、その裏には準備と執念がある。前回のエレコム神戸戦とノジマ相模原戦でQBに走られた経験を踏まえ、今回は「止める」ことをテーマに据えて臨んだ。結果、QBデイビッド・ピンデルのランをわずか31ヤード、パスも125ヤードに封じ、躍動を断ち切った。塚田HCは「気持ちがすごく入っていた」と守備について語るが、その一言がこの試合の本質を射抜いている。

一方の攻撃は、普段のような主導権を握れなかった。

「負けたら終わりが逆にプレッシャーになり、消極的なところが出た」と指揮官は認める。QBピアース・ホリーは本来の統率力こそ見せたが、塚田HCが説明したように、エレコム神戸のフロントが毎回ラッシュのスタイルを変えて揺さぶりをかけてきたことで、パス展開のストレスが増した。3サックを許したライン戦も、「マンパワーでやられました」と率直に振り返る。

【6回のパントを蹴ったオービックP 金森陽太朗(左) ©X LEAGUE】

それでも、チームは折れなかった。ハーフタイムには大仰な修正はなく、「1プレー1プレーを丁寧に」と促しただけだったという。勝負を決めたのは、そこで自ら立て直せる力。開幕からの連勝街道とは違い、ここ3戦は接戦が続く。その意味を「どんな内容であれ接戦をものにできているのは良いこと。ただし、中身は修正しないといけない」と語る姿に、王者を目指す現実感がある。

そして会見の最後、指揮官は「影の功労者」も忘れなかった。

「パントも良かった。影のMVPです」。苦しい展開を跳ね返すには、ひとつひとつの細部が効く――そんな試合だった。

修正すべき点と手にした勝利。その両方を抱えて、オービックは東京ガスクリエイターズとのセミファイナルへ向かう。