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オービックシーガルズ李卓 エースの実像「今の自分は努力で作りあげたもの」

2020年08月10日(月) 10:54


毎回ゲストスピーカーを招いて行われるオンラインQ&Aセッション「アメフトークスタンド」。8月7日のゲストは、リーグを代表するトッププレーヤーで日本人初のCFL入りに王手をかけるオービックシーガルズ・李卓選手。過去最高の50名近い参加者が集まり、注目度の高さがうかがえた。

今季はCFL、NFL入りを目標に持ち前の身体能力に磨きをかけてきた。特に注力したのがスピード強化。ランニングバックとして最重視される数値、40ヤードの目標タイムをNFLの同ポジションの基準値である4秒4(50m走に換算すると約6秒*)に設定し、スプリントトレーニングに積極的に取り組み手応えを得た。現在、チーム内では最速を誇る。
CFLが9月以降に開幕する場合(コロナの影響により開幕時期を交渉中。通常は6月開幕)、グローバル枠(カナダおよびアメリカ人以外が対象で、李選手ら日本人6名が含まれる)のコンバイン(フィジカルおよびスキルテスト)は行われないため、数値を披露する機会はないが、「過去最高の状態」を維持してドラフトを待つ。

肉体改造のみならず、プレースタイルも本国仕様へのアップデートに余念がない。日本人より守備範囲が広くスピードもある相手を攻略するには、「自分の間合いで相手より速く動く」ことが鍵だという。CFLがパスを多用することからパスターゲットとしての起用も視野に入れる。いずれにしても出場機会が増えれば課題となるのは耐久性だ。「試合後のダメージの深さが国内で試合をする時とは比較にならない。フィジカルアップやヒットの受け方の工夫で軽減できる部分もあるが、最終的には慣れていくしかないだろう」と覚悟を決める。

南山高校時代から全国区の存在で、慶應義塾大、オービックでもエース。才能に恵まれたエリートフットボーラーに映るが、「今の自分は努力で作りあげたもの」だという。リップサービスやビッグマウスとは無縁の、常に冷静で真摯な受け答えが印象的な李選手だが、こと「努力」について話題が及ぶと口調が熱を帯びる。「高校生の時から日本一の選手になるために誰よりも努力をしてきた自負がある」。
Q&Aセッションの中でも「加速力をアップさせる方法」を質問した学生に対し、「アジリティやフットワーク系の練習の際に笛で止めず最後に必ず5ヤードダッシュをする」ようにアドバイス。オービックの試合前練習を見ていると、動きを確かめるチームメイトに混ざって李選手だけが全力疾走している姿に目を奪われる。つまり自身も未だに学生へのアドバイスを実践しているということなのだ。たかが5ヤード、されど5ヤード。何万回と積み上げた5ヤードが日本を突き抜けて、いよいよプロフットボールの世界へ届こうとしている。

*1ヤードを0.9144mとして計算。参考までにワールドクラスの俊足で知られるラグビー日本代表福岡堅樹選手は5秒8