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【ライスボウルトーナメント】スタッツから読みとるライスボウルトーナメント出場8チームの特色とは

2025年11月20日(木) 12:00

X1 Superは23日(日・祝)からプレーオフ・ライスボウルトーナメント(RBT)が始まり、来年1月3日(土)に東京ドームで開催されるアメリカンフットボール日本選手権第79回ライスボウル by GA technologiesに向けたサバイバルバトルが展開される。

ライスボウルは社会人同士の対戦になった2021年度から富士通フロンティアーズとパナソニック インパルスの間で争われてきたが、今季はこの両チームがトーナメントの同じブロックに入ったため対戦の可能性があるのはセミファイナルとなる。したがって、ライスボウルでは過去にない初の顔合わせが実現する。昨年9年ぶりに日本一の座に輝いたパナソニックが連覇を達成するのか、富士通の奪還か。それとも過去4大会とは違う新しい王者が誕生するのか。熱戦の火ぶたは間もなく切られる。

【連覇を狙うパナソニック インパルスの守備陣 ©X LEAGUE】

RBTに出場するのはレギュラーシーズンの総合順位順にパナソニック(6勝)、オービックシーガルズ(6勝)、SEKISUIチャレンジャーズ(5勝1敗)、ノジマ相模原ライズ(4勝1敗1分)、富士通(4勝2敗)、東京ガスクリエイターズ(3勝3敗)、エレコム神戸ファイニーズ(2勝3敗1分)、IBM BIG BLUE(2勝4敗)の8チームだ(1位のパナソニックと2位のオービックはシーズン中の得失点差によるもの)。この8チームはそれぞれどのような特徴を持っているのか。

【SEKISUIチャレンジャーズWRブギー・ナイト(左)  ©X LEAGUE】

チーム オフェンス ディフェンス 得点 失点 TDラン TDパス FG成功率 TA GA 3rd-D成功率
パナソニック 2,430(6) 987(1) 289(1) 40(1) 22(1) 14(4) 5/7(4) 18(1t) 5(2) 26/46(3)
オービック 2,827(1) 1,351(2) 259(2) 62(2) 12(3) 22(1) 6/11(5) 12(3) 4(1) 30/53(2)
SEKISUI 2,112(4) 1,967(7) 155(6) 104(4) 8(5) 10(6) 8/11(3) 18(1t) 6(4t) 35/63(4)
ノジマ相模原 2,223(5) 1,769(5) 184(4) 123(6) 5(7) 15(3) 5/10(6t) 11(4t) 5(2) 35/67(5)
富士通 2,643(2) 1,383(3) 254(3) 90(3) 17(2) 15(2) 3/6(6t) 9(6) 6(4t) 26/45(1)
東京ガス 1,123(8) 1,899(6) 97(8) 113(5) 7(6) 2(8) 7/9(2) 11(4t) 11(7) 14/55(8)
エレコム神戸 2,218(3) 1,706(4) 160(5) 170(8) 10(4) 10(5) 7/7(1) 4(7t) 13(8) 28/63(6)
IBM 1,781(7) 2,193(8) 148(7) 153(7) 4(8) 8(7) 3/6(6t) 4(7t) 9(6) 25/66(7)

スタッツの見方:オフェンス=オフェンスによる獲得距離(単位はヤード) ディフェンス=ディフェンスによる喪失距離(単位はヤード) 得点=チーム総得点 失点=チーム総失点 TDラン=ランプレーによるタッチダウン数 TDパス=パスプレーによるタッチダウン数 FG成功率=フィールドゴール成功率 TA=Takeaway数 (ターンオーバーを獲得した回数) GA=Giveaway数(ターンオーバーを奪われた回数) 3rd-D成功率=サードダウンでファーストダウン更新に成功した確率;カッコ内の数字はRBT出場チームにおける順位

上の表はRBT出場8チームのレギュラシーズンでのスタッツ(記録)の主要部門を挙げたものだ。これを見ると勝ち点制による総合順位とは違う部門別の順位がわかり、チームの特色がよくわかる。例えば王者パナソニックのディフェンスの喪失ヤードは2位のオービックに361ヤードもの差をつけている。約1試合分の差だ。失点も40点(1試合平均6.7点)と少なく、ディフェンスが強力であることがうかがえる。さらにターンオーバーを奪った数(表の「TA」=18)もトップタイの数字だ。パナソニックと対戦するチームはただでさえ堅いディフェンスに対してインターセプトやファンブルロストといったミスを犯すと勝機がどんどん遠ざかっていくということだ。

【リーグトップの21TDパスを記録したオービックQBピアース・ホリー  ©X LEAGUE】

オフェンスの獲得距離ではオービックが1位でパナソニックが6位だが、さらにランオフェンスとパスオフェンスに細分するとここでもチームも特徴が浮き彫りにされる。表にはないが、オービックのランオフェンスは727ヤードで出場チーム中6位。パナソニックは1,361ヤードで1位である。逆にパスはオービックが2,100ヤードで2位の富士通(1,527)に600ヤード近くの差をつけるダントツ。パナソニックのパスは1,069ヤードで6位である。今季のオービックはパスで多くの距離を稼ぐオフェンスだとみることができる。

スタッツを見るうえで気を付けなければいけないのは、上記の数字から「オービックのランオフェンスは弱い」と誤った読み方をしてしまうことだ。オービックはランによるタッチダウンが12もあり、RB陣には西村七斗、長尾涼平、廣長晃太郎、島田隼輔といった名手が揃う。第4節までは毎試合110ヤード以上のラッシュを記録しており、こちらもオービックオフェンスの強力な武器であることは間違いない。

【富士通フロンティアーズRBトラショーン・ニクソン  ©X LEAGUE】

サードダウンでファーストダウンを更新できる率を表す「3rd‐D成功率」はオフェンスの継続力を示す指標のひとつだ。この率が高いほどオフェンスはファーストダウン更新を繰り返してドライブを継続することができる。つまり、それだけ得点に結びつく確率が高くなる。これは富士通がトップだ。富士通はRBトラショーン・ニクソンのランで着実にゲインを重ねるだけでなく、勝負強いQB高木翼とキャッチ能力の高いレシーバー陣を擁する。こうしたチームの特長が数字に表れたとみていいだろう。

【1試合で2回のピック6をマークしたノジマ相模原LBフィリップ・レッドワイン  ©X LEAGUE】

ターンオーバーも注目したいスタッツのひとつだ。ターンオーバーは攻撃権の奪い合いなので、奪われるGiveaway(喪失)は得点機会の損失、逆に奪うTakeaway(獲得)は得点機会の増加を意味する。このふたつを個々に見ても興味深いが、両者の差分(ターンオーバー率)にも目を向けたい。これはパナソニックが12でトップで、SEKISUIの12が続く。総合順位の上位4チームはいずれも6以上で、下位4チームは3以下というのも面白い。

【QBにプレッシャーをかけるIBMのLB文字大河(中央)  ©X LEAGUE】

その他、表にはないスタッツも含めてチームの特色を表す数字を紹介すると、QBサックはIBMが9回でトップ、フィールドゴール成功率はエレコム神戸が唯一の100%、ピック6(インターセプトリターンタッチダウン)ではノジマ相模原とパナソニックがともに2つでトップに並び、被QBサックではパナソニックと東京ガスが0を記録している。

【エレコム神戸K谷川堅斗(右)  ©X LEAGUE】

数字はあくまでひとつの結果を表すものに過ぎない。対戦相手は試合日のコンディションによっても左右されるから、チームの戦力や特徴を正確に表すものでは決してない。それでも、一定の傾向は表れるもので、こうしたデータから勝敗予想をするのもアメリカンフットボールの楽しさだ。

【今季QBサックを許さなかった東京ガスOL陣  ©X LEAGUE】

プレーオフはレギュラーシーズンとは違う、新しい「シーズン」だ。負けたら終わりの一発勝負なので、戦い方もレギュラーシーズンとは大きく変わる。スタッツからうかがえるチームの傾向とは全く違った姿が見られ、それが予想外の結果に結びつくことがあるかもしれない。それもまたフットボール観戦の醍醐味だ。