言葉の端々に表れるチームへの信頼と自信 富士通QB高木とパナソニック主将小西
2021年12月16日(木) 13:00「負ける気はしなかったです」
X1 Superセミファイナルの激闘から一夜明け、アメリカンフットボール日本選手権プルデンシャル生命杯第75回ライスボウルのプレスカンファレンス出席のために東京ドームホテルに姿を現した富士通フロンティアーズのクオーターバック(QB)高木翼はこう語った。
「負ける気がしない」という強気な発言をするアスリートには二通りある。徹底的な鍛錬と準備の末に自らの力に自信と信頼を持ち、相手にリスペクトを払いつつそれでも自己の勝利を確信するタイプと、単に相手をナメてかかるだけのブラッファーだ。もちろん高木は前者である。
12日に横浜スタジアムで行なわれた富士通フロンティアーズ対オービックシーガルズのセミファイナルは48分間を通して最大点差が7という大接戦だった。第3クオーターの4分9秒に高木からワイドレシーバー(WR)松井理己へのタッチダウンパスで17-10と勝ち越したあと最後まで逃げ切った富士通だったが、ひとつのタッチダウンで試合が振出しに戻るという緊迫感が最後まで続いた。
その試合でも高木は自分たちが敗れるとは思わなかったというのだ。オービックは昨年のジャパンエックスボウル(JXB)は言うまでもなく、これまで何度もXリーグの覇権を争ってきた相手だ。わずか2週間前に今季レギュラーシーズンの最終節で顔を合わせたばかりでもあった。手の内は知り尽くし、その分相手の怖さも熟知しているはずだ。
それでも勝利を信じ切ることができたのは、それだけ自分たちのフットボールに自信があったのだろう。マイケル・バードソンの退団により、今季は日本人QBで勝負すると山本洋ヘッドコーチ(HC)から伝えられたのは昨年のJXBで敗戦してシーズンエンドを迎えた直後だったという。その時高木は「いよいよ自分の番が来た」と武者震いする思いだったという。
シーズン中は山本HCも高く評価するように高木はQBとしてもチームのリーダーとしても大きく成長した。Xリーグで初めて1シーズンを通して先発QBを務めるうえで高木は自分自身とフロンティアーズに自信と信頼を深めていったのだろう。
同じくプレスカンファレンスに出席したパナソニック インパルスのオフェンスライン(OL)小西俊樹主将もこれまでのチームにはない強さを実感しているようだ。パナソニックがヤンマースタジアム長居で行われたセミファイナルで対戦したのはX1 Superのリーディングパサーである政本悠紀を擁するIBM BIG BLUEだ。
パナソニックにとっては2017年と2018年のポストシーズンでいずれもセミファイナルで敗れている嫌な相手だ。
「苦手意識というのは正直言ってあるものですね」と小西は素直に認めた。レギュラーシーズンでの対戦では65-17で圧勝した相手だが、セミファイナルでは14-0のリードを追いつかれ、第3クオーターにはついに逆転を許してしまった。
今季レギュラーシーズンを7戦全勝で終えたパナソニックが試合の後半に相手チームに7点ものリードを許したのはこれが初めてだ。逆境を経験したことのないチームは得てしてこういう状況に弱い。もっとも、この日のパナソニックはその悪例には当てはまらず、第4クオーターにQBアンソニー・ロウレンスからWR木戸崇斗への2本のタッチダウンパスで38-31と逆転勝ちした。
「以前のインパルスだったら、あのままこうなっていったかもしれませんね」と小西は顔の位置まで上げた腕を手の先から下に向けてチームが下降していく仕草を見せた。ただし、その表情には余裕があった。小西は言外に今年のインパルスは違いますよ、と語っているのだ。
今年のパナソニックは日本一を目指すことを公言し、リーグ戦1位も通過点に過ぎないと言い続けてきた。小西はチームを日本一にするために自ら立候補して主将の任についた。その小西もまた富士通の高木同様に、大きな目標と覚悟の下に順調に勝ち続けてきた自分たちに確固たる信頼を寄せている。
二人はプレスカンファレンスでフロンティアーズ山本HC、インパルス荒木延祥監督とともにライスボウル杯を挟んでフォトセッションに応じた。来年1月3日にその杯を高く掲げるのはどちらになるのか。自分たちの力に絶対的な信頼と自信を持つ両チームに、勝利の女神も迷わずにはいられないだろう。
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