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【Frontiers' Road to Rice Bowl Vol. 5】最終節:複雑な思いのセミファイナル前哨戦 宿敵シーガルズを破ったQB高木翼とWR松井理己のホットライン〈短期集中連載⑩〉

2021年12月31日(金) 14:00

フロンティアーズのレギュラーシーズン最終戦は長年にわたってXリーグの覇権を争ってきた宿敵オービックシーガルズが相手だった。昨年のジャパンエックスボウルで敗れて前人未到の日本選手権5連覇の達成を阻まれた相手でもある。「昨季の雪辱を」というのはわかりやすいテーマだが、そう簡単には割り切れない状況があった。この2週間後に行われるセミファイナルでも対戦することが既に決まっていたからである。

セミファイナルに向けて手の内を晒したくない思いは両チームにあった。シーガルズはクオーターバック(QB)にジミー・ロックレイではなく小林優之を先発出場させ、フロンティアーズも故障から回復途中のワイドレシーバー(WR)サマジー・グラントを温存。オフェンスは全体的にシンプルなプレーに限定するなど次戦を強く意識した戦い方は否めなかった。

しかし、それがすなわち「負けてもいい」試合とはならなかった。リーグ戦最終戦ということもあり、富士通スタジアム川崎には多くのファンやスポンサー関係者が集まった。無様な試合は許されず、ましてやシーズンを2敗で終える、前年に続きシーガルズに連敗するなど受け入れられるはずもなかった。

もちろんその思いは相手のシーガルズも同じだ。そして、試合は接戦ながらもシーガルズが主導権を握る形で推移する。2試合連続でスターターを務めた小林はオフェンスの2プレー目でワイドレシーバー(WR)西村有斗に57ヤードのロングパスをヒット。これがランニングバック(RB)望月麻樹の5ヤードタッチダウンランに繋がり、7-0と先制。さらにCFLから帰国してこの試合で出場登録されたばかりのキッカー(K)山﨑丈路のフィールドゴールで10-0とリードして前半を終える。

一方のフロンティアーズはパントやフィールドゴールトライがブロックされるなど苦しい展開を強いられた。

それもあってかフロンティアーズは後半にオフェンスのプレーコールを変えた。エースRBトラショーン・ニクソンのアウトサイドへのランを使うようになり、それが着実にゲインを重ねるなど効果を発揮した。第3クオーターにはクオーターバック(QB)高木翼がこれまであまり見せたことのない、デザインされたランプレーでのタッチダウンを奪い、3点差に迫る。

この日の高木は意識してWR松井理己(写真)を多くターゲットにしているように見えた。強い風が吹いてパスにも影響を与えてパス失敗が積み重なるなかで、それでも高木は松井にボールを集めた。まるでこの試合で彼とのホットラインを完成させるかのように。

試合の序盤では高めに浮いたり、逆にショートしたりしていた松井へのパスが徐々に通るようになってくる。そして、第4クオーターにこのホットラインは最も理想的な形で成功する。

山﨑の2つ目のフィールドゴールで点差を6とされたフロンティアーズはディフェンスバック(DB)渡辺裕也のインターセプトによってレッドゾーンからの攻撃権を得る。ニクソンのランで3ヤード前進した後、高木はエンドゾーン左に走り込む松井への17ヤードのパスをヒットさせた。コントロールと言い、タイミングと言い、これ以外にはないというピンポイントパスだ。これが17ヤードの決勝タッチダウンとなり、14-13でフロンティアーズが勝利を飾った。この日高木がこだわり続けた松井のパスが完成形を見た瞬間だった。

次回:〈短期集中連載⑪〉【Impulse’s Road to Rice Bowl Vol. 6】フロンティアーズとの直接対決(第6節):がっぷり四つのフロンティアーズ戦 膠着の中で際立つ佐伯眞太郎のキック力

関連リンク

<ゲームリポート>
セミファイナルの前哨戦は富士通がオービックに1点差勝利
https://xleague.jp/news/25825
<見逃し配信>(XリーグTV Powered By イレブンスポーツへの登録が必要です)
富士通フロンティアーズ vs. オービックシーガルズ
https://xleaguetv.elevensports.jp/video/6005